《社説②・03.12》:兵庫知事の疑惑認定 反省の色も見せぬ無責任
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・03.12》:兵庫知事の疑惑認定 反省の色も見せぬ無責任
自らの不適切な振る舞いを認めず、反省の色さえ見せない。行政のトップとしての資質を疑わざるを得ない。
斎藤元彦・兵庫県知事のパワーハラスメントなどの疑惑を巡り、県議会調査特別委員会(百条委)が最終報告書をまとめた。

告発文を書いた人物を特定するよう部下に命じ、公表したことが公益通報者保護法違反にあたる可能性を指摘し、「リーダーとして厳正に身を処す」ことを求めた。
ささいなことで職員を怒鳴り、夜間や休日にチャットを送りつける。そうした行為がパワハラに該当しうると結論づけた。
百条委は行政の疑惑を調査するために設置され、通常の委員会より権限が強い。過去に自治体の長や幹部の辞任につながった例もあり、その判断は重い。
しかし、知事は報告書を「一つの見解だ」と軽視するかのような発言を繰り返している。

告発を「うそ八百」と否定し、公益通報として扱わなかった。告発文を作成した元西播磨県民局長は懲戒処分を受けた。
内部告発者の探索や不利益処分を禁じた公益通報者保護法に反する行為である。権限を乱用し、自身の行為への告発を封殺しようとしたことは許されない。元局長への処分は撤回されるべきだ。
告発の信頼性を低下させるような言動も見過ごせない。
報告書を受けた記者会見で、「誹謗(ひぼう)中傷性が高い」と述べただけでなく、「元局長の公用パソコンには倫理的に不適切な文書があった」などと、私的情報を暴露するような発言もした。
告発の内容とは関係のないことである。告発者の人格をおとしめることによって問題をすり替え、自身の行為を正当化しようとするのは言語道断だ。
閣議決定された公益通報者保護法改正案には、今回の問題を受け、内部告発者の保護を強化する条文が盛り込まれた。
元局長と、百条委の委員を務めてネットで中傷を受けた元県議は死亡した。自殺とみられている。
にもかかわらず、知事は一連の対応を「適切だった」と強弁し、責任を認めようとしない。これでは県政の混乱を収束させることは到底できまい。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年03月12日 02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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