【主張②・12.05】:尹氏が一時戒厳令 正当性欠く深刻な過ちだ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張②・12.05】:尹氏が一時戒厳令 正当性欠く深刻な過ちだ
戒厳令の発出は深刻な過ちだった。これをきっかけに隣国韓国の政情が不安定化することを懸念する。
韓国の尹錫悦大統領は3日夜、革新系最大野党「共に民主党」が、多数派を占める国会を利用し、国政や司法を麻痺(まひ)させているなどとして、非常戒厳を宣布した。与野党は強く反発し、国会で4日未明、解除要求を決議した。尹氏は宣布から約6時間後に戒厳令を解除した。
4日未明、ソウルの大統領府で「非常戒厳」解除を発表する韓国の尹錫悦大統領(聯合=共同)
尹氏は戒厳令について「北朝鮮の共産勢力の脅威から韓国を守る」とした。戒厳司令部の布告は「自由民主主義や国民を守る」ために、一切の政治活動などを禁じた。
だが、今回の戒厳令の方が自由と民主主義に反しており、出すべきではなかった。軍事政権による戒厳令は過去の話だったはずだ。先進国の一員と見られるようになっていた韓国の戒厳令騒動は、国のイメージ低下も招こう。
戒厳令の権限は大統領にあるが要件を満たしていたとはいえない。正当性が感じられないからこそ、野党に加え、与党も世論も批判しているのだろう。
朝鮮戦争は休戦中で、韓国は今、北朝鮮などと交戦状態にない。南北の体制間競争は韓国が圧倒的に優勢だ。大規模な騒乱や災害に直面してもいない。
尹政権は大統領夫人の疑惑や、野党による閣僚などへの相次ぐ弾劾要求で立ち往生していた。支持率は低迷していた。
事態打開へ戒厳令に頼ったのであれば、あまりに唐突で理解できない。北朝鮮のスパイが国内にいるなら通常の手続きで捜査、摘発すればよかった。尹氏は民主主義国の為政者失格の烙印(らくいん)を押されても仕方ない。
尹政権発足後、日米韓3カ国は安全保障協力を強めてきた。北朝鮮の脅威を抑止し、「台湾海峡の平和と安定」を守る上で必要だったからだ。
元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】 2024年12月05日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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