【社説・01.05】:2025政局展望 政策の全体像示し論争を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・01.05】:2025政局展望 政策の全体像示し論争を
与野党ともに存在意義が問われる試練の年になる。
自民、公明両党は昨秋の衆院選で大敗、少数与党に転落した。数の力で強引に政策を進める手法が通じなくなり、野党の協力を得ての政権運営が欠かせなくなっている。
石破茂首相は国会で「熟議」を口にする姿がおなじみになった。しかし、野党を取り込むための場当たり的な対応と思える局面も目立つ。
野党も実績づくりに、個々の政策を与党にのませようと腐心しているように見える。党勢拡大を目指すのは当然としても、同時に自公に代わる政権づくりを示せなければ、支持拡大には限界があろう。
7月には参院選がある。各党は政権を担うことを視野に入れ、有権者の審判を受けてもらいたい。
石破首相は既に衆参同日選の可能性についても言及している。少数与党には虚々実々の駆け引きが必要なことも否定はしない。しかし、今、そんなことを口にする段階だろうか。疲弊した国民生活を立て直し、日本経済を再生することが一番求められている。
まずは月内に召集される通常国会での約115兆円の2025年度当初予算案の審議がヤマ場になろう。
過去最高の税収見通しが続く一方、家計の消費に占める食費の割合を示す「エンゲル係数」は歴史的水準になっている。円安、物価高でゆとりのない国民生活に目を向けず、歳出削減に手を付けないようでは困る。歴代政権で効果が薄かった政策をしがらみなく断ち切ることこそ、石破政権に期待されたことではなかったか。
国民の関心は所得税が生じる「年収103万円の壁」問題に向いている。与党は25年度税制改正で所得税の非課税枠を103万円から123万円に引き上げることを決定はしたが、178万円への見直しを求めた国民民主党の内容とはずいぶん隔たりがある。
国民民主以外も国民負担を抑え、手取りを増やす施策を提言している。税収や社会保障の在り方を含めた、壁の撤廃議論を尽くすべきだろう。
少子高齢化が進み、負担を覚悟する状況なのは、国民も理解している。各党がオープンな形で責任ある案を示し、結論をまとめてもらいたい。
自民党は党内力学で方針を決め、時に首相をすげ替える疑似政権交代で国民の不満をそらせてきた。しかし、そんな手法はもはや通用しない。
政治への失望が交流サイト(SNS)などの反響に表れている。自民党は政治とカネの問題で、愛想を尽かされた従来の政治を見直さなければ、党勢回復など望むべくもなかろう。
野党第1党である立憲民主党の責任も重大だ。夏の参院選で、国民に政権交代を含めた選択肢を示すには、改選1人区での野党協力を実現しなければなるまい。
他の野党も個々の政策だけでなく国政の全体像を示して議論を深めるべきだ。それが党の政権担当能力を示すことにもなり、既成政党への不信や「政治離れ」を食い止める手段にもなる。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月05日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。