【社説・11.09】:行財政改革/県民目線で絶えず検証を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.09】:行財政改革/県民目線で絶えず検証を
兵庫県知事選では、失職した前知事が実績に挙げる行財政改革も争点となる。人口減少や教育、地域活性化など県が抱える課題への取り組みも、財源の裏打ちなしには実現しない。施策を実効性のあるものにするための財源をどう確保していくのか、議論を深めなければならない。
前知事が県政の柱に据えたのが、行財政改革だった。自身の任期中の給与や期末手当、退職金を削減する条例を成立させ、公用車を元知事が乗っていた高級車からミニバンに変更するなどの成果を強調する。
耐震性不足に伴う県庁舎の再整備計画も凍結した。築50年を超す1、2号館は解体されるが、当初700億円程度とした事業費が資材価格高騰などで1千億円程度に膨らんだとして、新庁舎建設を保留した。当面はテレワーク活用で出勤率を4割程度とすることで執務空間を確保するとしたが、災害時の対応への懸念などから県議会で批判を受けた。
前知事の失職後、職務代理者の副知事は「出勤率の概念を取り払い、必要な人員を収容する新庁舎建設を前提に検討する」との方針を示した。選挙戦では、前知事を含む大半の候補が防災拠点機能を備える県庁舎整備の必要性を訴えている。
財政状況の透明化では一定の評価がある。県は2007年から県債(借金)の返済に備え積み立てる県債管理基金に他の基金を集約するなどして、残高を実態より多く見せる手法を続けてきた。前知事はそれを解消し、各基金の残高を明確にした。
貯金に当たる財政調整基金の残高は23年度末時点で約30年ぶりに100億円を超え、約127億円となった。企業業績の回復による税収増による影響が大きいが、前知事は「改革」の効果とも主張する。
ただ127億円という額は、県の財政規模からすると高い水準とは言えない。県債の実質的な残高は3兆円余りに上る。将来の借金負担の重さを示す「将来負担比率」は全国ワースト水準が続く。阪神・淡路大震災関連の県債がまだ約2千億円残り、完済まで10年程度かかる。
加えて、県の外郭団体「ひょうご農林機構」が進める分収造林事業、企業庁が産業・住宅用地を造成・分譲する地域整備事業で多額の負債を抱える。県民の負担増や行政サービスの低下も懸念されるだけに、詳細な情報開示が欠かせない。
行財政改革の努力は現状で十分なのか。施策の選択と集中は徹底しているのか。県民の目線で、絶えず検証していく必要がある。
財政が厳しいからこそ、持続可能な将来像と地域の活力につながる中長期のビジョンが問われる。各候補は具体的な構想を語るべきだ。
元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月09日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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