【社説②】:新ワクチン承認 長期的視点で活用策を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:新ワクチン承認 長期的視点で活用策を
厚生労働省は米ノババックス社が開発した新型コロナウイルスワクチンを承認した。国内で使えるワクチンは4種類目で、5月下旬から自治体への配送を始める。
武田薬品工業が技術提供を受けて国内で製造することから、安定的な供給が期待される。
新しいワクチンは「組み換えタンパクワクチン」と呼ばれ、米ファイザーや米モデルナなどとは仕組みが異なるタイプだ。
現状では3回目の全国接種率は5割に満たない。選択肢の広がりを接種へとつなげたい。
ただ有効活用については、ワクチンの安全性や副反応、接種効果について丁寧に説明することが大前提となるのは言うまでもない。
米ノババックス社製は遺伝子組み換え技術を利用し、合成したウイルスのタンパク質を接種して抗体を得る仕組みだ。この手法は帯状疱疹(ほうしん)やB型肝炎のワクチンなどで既に実用化されている。
オミクロン株流行前に行われた海外の臨床試験では1、2回目の接種後に90%前後の発症予防効果を確認した。3回目接種ではウイルスの細胞への侵入を防ぐ中和抗体の値が改善したという。
ただ、実際に使用した中での効果や安全性のデータが少ないとする専門家もいる。副反応などを注意深く見ていく必要がある。
発熱やアレルギーなどの副反応を懸念して3回目接種をためらう人が若年層に少なくないという。
厚労省は米ノババックス社製の使用を、既存のワクチンでアレルギー反応が出た人にも想定している。希望する人が確実に接種できるように後押ししたい。
政府は4回目接種に向けた具体案を策定中で、高齢者や基礎疾患のある人に絞る方向だ。海外でも高齢者が中心になっていることなどが理由だという。
だがコロナの収束は見通せず、新たな変異株出現も想定される。長期化を見据えた場合、幅広い年齢層への接種が必要ないのか、慎重に検討しなければならない。
ワクチン接種を巡っては先行の2種が浸透し、英アストラゼネカ製は副反応の問題で原則40歳以上など打つ人が限定されている。
職場接種を行う事業者や大学などではワクチン消化に苦慮する所もある。今後大量に余る可能性も指摘されており、途上国への提供も含め有効活用を検討したい。
ワクチンの国産化は実現できていない。治療薬も誰でもすぐ使えるものはない。政府は今後の見通しを国民に説明するべきだ。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年04月21日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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