【金口木舌・01.10】:豚熱5年、かつ丼にありがとう
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【金口木舌・01.10】:豚熱5年、かつ丼にありがとう
5年前の年明け、県内で34年ぶりの豚熱が発生した。白い防護服の人間が殺処分した豚を埋却する穴にまかれた大量の白い粉。手塩にかけた豚を思わぬ形で失った養豚家の悲しみ
▼中国で「謎の新型肺炎」が出現した時期と重なる。その後、コロナ禍は世界を暗く覆い、毎日のように豚は殺され埋められ、殺処分は1万2千頭を超えた。心冷えたあの季節からもう5年、まだ5年
▼全国では今も豚熱終息に至らず、県内では予防ワクチン接種が続き、農家に負担がのしかかる。海外への輸出解禁の見通しは立たない
▼いずれは人間に食べられる命。消費者が殺生と食を後ろめたく思うのは一時の感傷か。命の重さを一番知るのは豚を育てる人だろう。殺処分に立ち会い続けた養豚家の姿を忘れまい
▼SF掌編も多く描いた「ドラえもん」の藤子・F・不二雄さんは「ミノタウロスの皿」など食にまつわる短編を残した。「人間が食べる原罪を強く自問自答したのでは」と作詞家の児玉雨子さんは指摘する。豚熱発生5年の8日、死んでいった豚のことを思い、ミニかつ丼を食べた。養豚業の「通常運転復帰」も応援しよう。
元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【金口木舌】 2025年01月10日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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