【社説①・12.30】:感染症同時流行/冬休みは基本対策徹底を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.30】:感染症同時流行/冬休みは基本対策徹底を
インフルエンザの流行が急激に拡大している。兵庫県内の定点医療機関1カ所当たりの16~22日の患者数は平均46・65人に上り、警報レベルの基準値(30人)を大きく超えた。県内17保健所のうち14の管内は警報レベルだ。患者は15歳未満が約7割を占め、社会福祉施設での集団発生も相次いでいる。
症状は高熱や頭痛、倦怠(けんたい)感に加え、強い吐き気を訴える患者が多く、重症化するケースも目立つ。昨季を上回る流行拡大の要因として、新型コロナウイルス禍で定着した感染対策の基本動作が新型コロナの5類移行でゆるんだことが挙げられる。いま一度、基本的な対策を日常生活で徹底することが重要になる。
一方、新型コロナウイルスの感染も要警戒だ。県内の定点当たり患者数は3・35人で前週の1・44倍となり、各世代がまんべんなく感染している。変異株の主流は「KP・3」から「XEC」に置き換わりつつあり、高齢者や持病のある人は注意する必要がある。
発熱や長引くせきが特徴の「マイコプラズマ肺炎」も若者を中心に過去最多のペースで報告され、今冬は三つの流行が重なる「トリプルデミック」が危惧される。近年は新型コロナ対策でさまざまな感染症の流行が抑制され、免疫力が弱まっている前提で対応を考えるべきだ。
感染症の同時流行により、せき止めや解熱剤など身近な薬が不足しかねない。いざというときのために市販薬を備えておくのは有効だが、最低限必要な量だけ購入するよう心がけたい。特に子どもや妊婦が使える薬は限られ、不足すると代替薬の入手が難しい。薬剤師などに相談し、冷静に行動することが重要だ。
三つの感染症を予防するための基本動作は変わらない。マスクの着用や手指の消毒、適度な換気などである。新型コロナとインフルエンザは65歳以上と持病のある人がワクチンの定期接種の対象となっており、利用すれば重症化を防ぐ効果が見込まれる。かかりつけ医に相談してメリットとデメリットを見極め、接種の可否を判断してほしい。
年末年始は9連休を予定する職場が多く、帰省や旅行での混雑が予測される。医療機関の態勢が手薄になる時期だけに、重症化リスクの高い家族を守る行動が求められる。
冬場は温度差によるヒートショックや脳卒中などで救急患者が増える時期だ。加えて感染症の患者も殺到すると救急医療が逼迫(ひっぱく)する恐れがある。重症化の兆候があればためらわず救急車を呼ぶべきだが、不要不急の利用は避けなければならない。迷ったら、市町が開設する救急相談ダイヤルに電話するのも一法だ。
元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月30日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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