【こちら特報部・01.26】:万博のために「引き抜き人事」まで…ムリにムリ重ねる大阪府政 府職員で増える退職・休業・残業80時間超
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【こちら特報部・01.26】:万博のために「引き抜き人事」まで…ムリにムリ重ねる大阪府政 府職員で増える退職・休業・残業80時間超
4月13日に大阪・関西万博の開催が迫る中、大阪府庁から悲鳴が上がっている。原因は1月1日付の人事異動。課長補佐級以下で8人が万博関連部署に異動となったが、元の部署に補充がなく、職員組合が猛抗議している。7万4000人超の巨大組織の中ではきわめて小規模な異動だが、なぜ不興を買っているのか。(太田理英子)
◆万博に職員を送り出した職場への補充なし…つまり戦力減
「万博をやるのは何年も前から分かっていたこと。こんな勝手なことがあるのか」。府関係職員労働組合の小松康則執行委員長は、東京新聞「こちら特報部」の取材に怒りをあらわにした。
1日付で発令された人事では、大阪市も加わる「万博推進局」と国内外の賓客に対応する「大阪儀典室」に、課長補佐級以下の8人が配属となった。だが、それぞれがいた人事課や子ども家庭局などの部署に補充はなかった。
組合は14日、「年度末を迎えて多忙となる職場にとって重大な問題。『万博のため』との引き抜きは、あまりにも無責任過ぎる対応」とし、吉村洋文知事宛ての抗議文を提出した。
◆「維新は職員削減が一丁目一番地」既に手一杯になっている現場
わずか8人の異動。だが小松氏は、府が1990年代後半から人員削減を進めてきたとした上で、「維新府政は職員削減が一丁目一番地。人手を増やす選択肢がない中、職員は新事業や児童虐待の増加といった目の前の業務、対応で精いっぱいだ」と話す。
近年はさらに、退職者や休業者の増加が顕著で、危機感につながっている。府によると、2024年4〜12月に退職した職員は101人で、「自己都合による退職は近年増加傾向にある」(人事課)という。また「精神疾患などにより7日以上休業した職員」は、2023年度は300人で、2019年度より約1.3倍増えた。
同課は退職者の増加について「雇用の流動性が高まっていることも背景にある」との見解だが、組合側は「極限まで人を減らされ人手不足で、職場は疲弊しきっている」と主張。府の調査では、月80時間超の時間外勤務をした職員は、2024年4〜12月で207人で、5年前の同時期から約1.5倍増えている。
小松氏は「万博に人を出すなと言っているのではなく、定数増や補充による過重労働の軽減を求めている。このままでは行政サービスの質の低下を招く」と訴える。
府側は組合の抗議と要請について、「万博に向けて全庁を挙げて取り組む方針の下で対応している。通常は欠員が生じた際、前倒し採用や臨時職員の活用によりできる限り応じている」とコメントした。
◆手が足りない問題は大阪だけ? 災害の時に対応できる?
大阪府の人口10万人当たりの職員数は約850人(2024年4月時点)で、教育や警察・消防などを除いた「一般行政」分野では約90人と、全国的にも低水準だ。
桃山学院大の吉弘憲介教授(地方財政論)は「どの都道府県も人的資源が潤沢ではないが、大阪府の場合は急に生じる行政需要に人手を割く余力が相対的に少ない」と指摘する。地方行政では旧来、財政再建で人件費が調整弁にされてきたが、災害時などの対応に手が回らなくなれば市民生活に大きく影響する。
ビッグイベントの開催時、限りある人的資源はどう割り振るべきなのか。吉弘教授は「短期的イベントに人手が割かれるのは致し方ないが、だからこそ通常業務が圧迫されないよう計画的に運用すべきだ」と強調する。人口10万人当たりの職員数(同)が約590人で全国最少の神奈川県でも、2027年に「国際園芸博覧会」が予定される。「大阪の例はひとごとではなく、負担が生じない対策を今から考える必要がある」
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社会 【話題・こちら特報部・大阪・関西万博】 2025年01月26日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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