【社説①・01.28】:フジ社長辞任 メディア不信招いた責任重い
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.28】:フジ社長辞任 メディア不信招いた責任重い
経営幹部の辞任は当然として、不祥事を招いた企業体質を根本から刷新する必要がある。
元タレント中居正広氏の女性トラブルを巡り、フジテレビが27日、2度目の記者会見を開いた。危機対応のまずさを認め、社会の厳しい批判を浴びた責任を取って、嘉納修治会長と港浩一社長が辞任した。
港氏らはトラブルの把握後、「事案を公にしたくない」という女性の意向を踏まえ、積極的な調査を行わず、中居氏への十分な事実確認もしなかったという。
また、17日に開いた最初の記者会見は出席者を制限したうえ、映像撮影も認めなかった。さらに女性のプライバシーを理由に、質問にもほとんど答えなかった。
こうした対応について、港氏は「カメラを向けて疑惑を追及してきた弊社がカメラから逃げたと言われても仕方ない。メディアの信頼性を揺るがした」と陳謝した。報道機関であることの自覚を欠いていたと言わざるを得ない。
フジのCMを差し止めたスポンサー企業は約80社に達している。2024年3月期は、CM放映によって1500億円近い収入があったが、今後は収益が悪化し、経営基盤が揺らぎかねない。
番組の制作現場は、高い視聴率を取れるタレントの歓心を買おうとする傾向が強い。不祥事の背景には、タレントへの過剰な接待があった疑いが持たれている。
そうした疑惑がスポンサー離れに加え、視聴者の不信感にもつながっている。他局や地方のテレビ局に与える影響も大きい。
後任の社長には、親会社であるフジ・メディア・ホールディングスの清水賢治専務が就任する。トラブルの事実関係などは今後、第三者委員会で調べるという。
最大の焦点は、トラブルへのフジ社員の関与の有無である。フジは週刊誌報道の直後に関与を否定するコメントを出し、27日の会見でも同様の説明を繰り返した。
だがフジの社員は、トラブルが起きる前、この女性を誘い、中居氏の自宅で開かれた食事会に参加していたという。トラブルは、この延長線上にあったのではないのか。十分な調査が必要である。
時代の変化とともに、セクハラや人を傷つけるような過激な笑いには厳しい視線が向けられるようになった。タレントやテレビ局スタッフの振る舞いにも慎重さが求められている。
こうした社会の変化を見落としてきたところに、フジの不祥事の遠因があるのではないか。
元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月28日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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