【社説・12.17】:海兵隊グアム移転開始 負担軽減と言えるのか
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.17】:海兵隊グアム移転開始 負担軽減と言えるのか
中谷元・防衛相が在沖米海兵隊の米領グアムへの移転が12月に開始されたと発表した。先遣隊100人が2025年中に移転を完了する。移転計画は06年に在日米軍の再編ロードマップとして日米両政府で合意していた。第2弾は未定で、4千人以上とされる全体の完了時期も不明だ。
合意から18年もたってのスタートだが、県内では自衛隊が増強され、日米合同訓練は増加している。一方で、事件・事故や基地被害も続いている。負担軽減と言えるのか疑問を持たざるを得ない。
移転が12月に始まることは6月に報じられていた。移転完了は28年ごろとされていた。今回、防衛相が来県して発表することで、政府の負担軽減の努力を演出したかったのだろう。
在沖海兵隊は12年時点の定員が1万9千人で、4千人以上がグアムへ、約5千人が米本土やハワイに移り、約1万人が残るとされている。兵員数は11年の1万5365人を最後に公表されておらず、実際に何人が残るのかはっきりしない。日本政府も説明しようとしない。
グアム移転は、13年の「沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画」の前提であり、キャンプ瑞慶覧の一部や牧港補給地区(キャンプ・キンザー)約142ヘクタールの返還と連動する。玉城デニー知事は中谷氏に具体的な移転計画を明らかにするよう求め、訓練場整備計画のあるテニアン島への訓練移転も求めた。
米軍再編は県民の負担軽減の強い訴えに応えるという建前もあったはずだが、その建前はもはやないに等しい。中国の封じ込めを目的に、南西諸島から台湾、フィリピンを結ぶ「第1列島線」と、その後方のグアムを中心とする「第2列島線」に兵力を分散配置し、第1列島線を戦域として日米が一体となって戦う作戦計画が明らかになっているからだ。
移転計画は12年に見直され、司令部を沖縄に残し、主力歩兵部隊の第4連隊などが移転することになった。離島に拠点を置いて戦う「遠征前方基地作戦(EABO)」の中核を担う海兵沿岸連隊に改編される見通しだ。
日本政府はグアムの新基地建設に約3730億円支出している。グアム現地には、新基地用地が「先住民にとって神聖な土地」だとして反対運動がある。グアム、サイパン、テニアンは戦場になった島であることも忘れるわけにいかない。
県内の自衛隊施設面積は再編ロードマップを合意した06年の639・6ヘクタールから21年には779・8ヘクタールと2割以上増えている。辺野古新基地建設では、ばく大な税金をつぎ込んで無謀な埋め立て工事が続いている。同基地に自衛隊を常駐させる計画もある。演習は県民の日常生活も脅かしている。戦場化されつつある中での、小手先の「負担軽減」にごまかされてはならない。
元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月17日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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