【社説②】:日本のEV戦略 総力挙げて巻き返しを
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:日本のEV戦略 総力挙げて巻き返しを
日本の自動車メーカー大手3社の電気自動車(EV)戦略が出そろった。
トヨタ自動車は2030年までにEV開発に4兆円を投資し、30車種を世界市場に投入する。年350万台の販売を目指す。
ホンダは30年までにソフトウエア開発を含めて5兆円を投じ、30車種を発売する。年200万台以上の生産を目標とする。
日産自動車は26年度までにハイブリッド車(HV)を含めた電動車に2兆円を投資する。30年度までにEV15車種を出す計画だ。
各国のエネルギー事情や顧客層の違いなどから日本メーカーはEVの急拡大に慎重だったが、投資家や環境団体などの厳しい目を受け、ようやく本腰を入れる。
先行する欧米勢に市場を支配された後では挽回は厳しい。自動車は日本の基幹産業であり、競争力を失えば影響は甚大だ。
日本の各社は巻き返しへ総力を挙げるとともに、政府も技術開発や原材料の調達などを後押ししていくべきである。
トヨタの目標台数はグループ全体の3割以上、ホンダは4割に当たる。果敢な設定で、脱炭素に消極的なイメージを拭いたい狙いも透けるが、世界に目標を具体的に示した意味は大きい。
足元では半導体不足のほか、ロシアのウクライナ侵攻で資源価格が高騰している。目標達成に向けて、部材の確保などでより精緻な取り組みが求められよう。
急速なEVシフトが部品メーカーなどの下請け切りにつながらないように配慮してもらいたい。
ホンダはソニーグループとEVで協業する。ホンダの車両開発や製造の技術と、ソニーが得意なセンサーやエンターテインメントの技術を組み合わせるという。
EVでは将来、自動運転の本格導入が見込まれている。
自動車と縁の薄かったIT企業なども積極的に参入を進めて、日本の自動車産業全体の競争力を底上げする機会としたい。
自動車業界は国内のEV市場については、すぐ拡大するとはみていない。国内での本格的な生産と普及には、安価で安定的に供給されるクリーンな電力と充電設備の拡充が不可欠なためだ。
そのためにメーカー各社が努力するのは当然だろうが、政府も電源の脱炭素化や関連インフラの整備を急ぐ必要がある。
米国で導入されている高速道路のEV専用レーンなど利用促進策も考えていくべきだ。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年04月18日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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