【社説・12.10】:補正予算案審議入り 与野党は国民目線で熟議を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.10】:補正予算案審議入り 与野党は国民目線で熟議を
少数与党による政権下で、熟議できる国会に変われるのか。試金石となる審議だ。
きのう政府は2024年度の補正予算案を国会に提出した。一般会計の総額は13兆9433億円に上る。物価高に対応した経済対策が大半で、能登半島での地震、豪雨からの復興費も盛り込んだ。
自民、公明両党は早々に衆院を通過させ、来週にも成立させたいようだ。しかし、例年通りに短期間の審議で事足りる情勢にはない。
何より、巨額の補正予算ありきの政治を改める機会にすべきである。新型コロナウイルス禍に乗じて常態化した。補正は「特に緊要となった経費」を計上するという原点に立ち返らねばならない。
経済対策費の規模は、東日本大震災が起きた直後の11年度の補正予算総額に近い。今は財政出動が求められたコロナ危機が一段落し、景気は「緩やかに回復」と国自ら判断している。昨年度を上回る額は明らかに過大だろう。
巨額となった発端は、自民党に「政治とカネ」の問題で逆風が吹いた衆院選の初日、挽回を狙った石破茂首相の発言にある。「昨年を上回る大きな補正予算」とぶち上げ、従来の発想を引きずったまま編成した。選挙対策と言わんばかりに、経済情勢を見極めず、いかに額ありきなのかは中身を見れば分かる。
看過できないのは、歳入の半分近くの6兆6900億円を借金の国債で賄うことだ。国債残高は1100兆円を超え、世界で突出した財政赤字に拍車がかかる。24年度、税収は5年連続で過去最高となる見込みだ。この好機に財源を国債に依存する構造を改めようとするどころか、悪化させる姿勢は理解し難い。
支出では、首をかしげたくなる項目も少なくない。象徴は半導体産業向けの支援であり、次世代半導体の量産を目指すラピダスを念頭に1兆3千億円を拠出する。また宇宙産業などにも多額の予算を振り向け、しかも、無駄遣いの温床と指摘されてきた基金に積み増す手法をとる。
成長戦略として中長期をにらむ政策経費は本来、当初予算に計上し、妥当性を念入りに審議すべきものだ。補正予算からこれらを削除し、組み替えてしかるべきだろう。
さらに物価高対策は一定に必要とはいえ、電気・ガス、ガソリン代への補助に、1兆4千億円をさらに投じる手法は妥当なのか。
立憲民主党は全体をスリム化した上で、物価高対策はばらまきではなく、必要な人や事業者に的を絞った対案を提示した。与野党には国民目線に立った熟議を求める。
石破政権は「103万円の壁」の引き上げを交渉材料に国民民主党を取り込み、原案通りに可決する道筋を描く。審議をそこそこに、数を頼みに可決に持ち込むこれまでの手法と何ら変わらない。
国民民主党にしても、水膨れさせた補正予算案を是とするなら、国会に熟議を求めた民意に反する。自民党政権下で政治が主導してきた、あしき手法を改めさせるのが、野党の責務だと自覚すべきだ。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月10日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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