【社説①・01.24】:財政収支の赤字 ツケ先送りに歯止めを
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・01.24】:財政収支の赤字 ツケ先送りに歯止めを
「財政健全化」の旗を掲げながら、実際はずるずると借金を積み重ねている。将来へのツケの先送りをいつまで続けるのか。
政府は、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)が2025年度も4兆5千億円の赤字になるとの試算を示した。
昨年7月時点の試算では8千億円の黒字化を示していた。だが、大型経済対策の歳出が響き、一転して赤字修正を迫られた。
PBは、社会保障や公共事業などの政策的経費を借金に頼らず、どれだけ税収などで賄えているかを示す指標だ。中長期的な財政再建を進める上で、まずは単年度のPB黒字化が欠かせない。
日本では、2002年度から赤字体質の脱却へ「10年代初頭の黒字化」を目標に掲げたが、国債依存の構造は改まらなかった。黒字化の目標時期は延期を繰り返し、25年度に設定されていたが、再び先送りすることになる。
閣議決定した目標がいつまでたっても達成できない状況は、日本の財政規律に対する国際的な信頼低下を招きかねない。
昨夏の試算が黒字だったのは、円安を背景に業績好調な輸出企業からの税収増が大きかった。だが常態化している巨額の補正予算は考慮しておらず、「形だけの黒字」「内閣府によるお手盛り」とも見られていた。
その後就任した石破茂首相が、前年度を上回る約14兆円の補正予算を押し通したことで、赤字に転じた。「財政再建の旗は降ろさない」と石破氏は話したが、言行不一致も甚だしい。
政府は新たに、賃上げや投資の加速で26年度には黒字転換する試算を示す。だが与野党で議論が続く追加減税策は反映させず、米トランプ政権による関税強化などの波乱要因もある。日本企業に影響が及び、税収が想定より増えない懸念もある。
PBの計算には含まれないが、金融正常化で金利が上がれば、国債の利払い費が膨らむことも避けられない。
すでに国の借金は1300兆円に迫り、先進国の中で最悪水準にある。税収が伸びた時は、非常時に重ねた借金を減らすことが、持続可能な財政運営の常道である。
政治が人気取りに走り、野放図な支出を抑制できないなら、欧米のように、財政の推計や検証を専門家らが担う独立機関を創設すべきだ。超党派の国会議員連盟や民間の政策提言組織も求めている。与野党で真剣に検討してほしい。
元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月24日 16:05:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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