【HUNTER・09.25】:江差看護学院パワハラ死問題、法廷へ|追い込まれた遺族 ―「道が裁判を望んだ」
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER・09.25】:江差看護学院パワハラ死問題、法廷へ|追い込まれた遺族 ―「道が裁判を望んだ」
北海道立江差高等看護学院の教員によるパワーハラスメントで在学生が自殺した問題で18日午後、北海道へ損害賠償を求める方針を固めていた遺族が函館地方裁判所に訴えを起こした。原告となった遺族は代理人を通じ「本当は裁判などしたくなかった」「道が裁判を望んだ」とコメント、第三者調査の結果を否定し続けた道が事実上遺族を裁判に追い込んだことへの憤りを示し、不本意ながらも訴えを起こさざるを得なかった心境を明かした。
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提訴後に函館市内で記者会見した遺族代理人の植松直弁護士(函館弁護士会)によると、昨年5月の謝罪後に始まった示談交渉で道は第三者調査が認めたパワハラと自殺との因果関係を否定し続け、本年4月に改めて遺族の問い合わせに応じた際にも謝罪が自殺に対するものではなかったと回答した。以降、道からはなんらの連絡もないといい、遺族としては裁判で道の責任を認めさせるしかなくなった形だ。遺族は8月末までに提訴の決意を固め、亡くなった学生(当時22)の命日である9月18日に訴状を提出することにした。
「ご遺族は何度も道に裏切られた」と植松弁護士は訴える。そもそも江差看護学院は学生が自殺した際、遺族に対して「原因は思い当たらない」などと開き直り、必要な調査をしていない。その後、一連のパワハラを問題視する「父母の会」の告発で日常的なハラスメントが表面化し、第三者調査委員会が発足したが、この時も自殺事案は調査の対象にならなかった。意を決した遺族が代理人を通じて調査を求めたことでようやく別の第三者委が立ち上がり、昨春までに複数のハラスメント被害の事実や自殺との因果関係などを認める報告をまとめることとなる。報告後、道から直接謝罪を受けた遺族は、当然ながら第三者調査に基づいた対応がなされると考えたが、期待は裏切られた。その後の「手のひら返し」は先に述べた通りで、遺族にとって道の態度はまさに「裁判を強制する」ものにほかならなかったと言える。
原告の女性(48)が最愛の長男を喪ったのは、2019年9月。今日に至るまで5年間にわたって絶えなかった心労は、今後も数年間続くことになる。結びに、提訴後に発表された遺族コメントの一部を採録しておく。
《息子は幼少時、喘息を患い、入退院を繰り返しておりましたが、入院の際、自分の世話をしてくれた看護師に憧れを抱き、江差高等看護学院に進学することを決意しました。人の生命を救うための看護師を育てる学院で、まさか教員からのパワーハラスメントに苦しみ、自ら命を絶ってしまうことになるとは。未だに受け止められず、なぜ息子を救ってやれなかったのかと自責の念に絶えません。
昨年、第三者調査委員会が複数の教員による息子へのパワーハラスメントや自死との相当因果関係を認める結果を発表し、道はそれを受けて私に謝罪をしました。しかし謝罪後の話し合いが進むと、道は息子の死がパワハラが原因であることを認めないという回答を示し、私はショックと驚きで道の回答に目を疑いました。このような回答をすることがわかっていれば、謝罪には応じませんでした。道は、謝罪の時点では「裁判で認められない限り、自死の原因がパワハラにあったことを認めない」という方針を決めていて、昨年の謝罪はパフォーマンスだけだったのではないか、との思いでいっぱいです。知事が再三言っていた「誠意」はどこにあるのでしょうか。これまで何度も裏切られて辛い思いをしており、誠意などまったく感じられません。
静かに落ち着いた生活ができると思っていましたが、道からの対応で裁判までしなければならなくなり、不安しかありません。本当は裁判などしたくありませんでした。道には人が1人亡くなっている事実を受け止め、責任をとっていただきたいです。また新たに時間がかかることとなりましたが、道が裁判を望んだので、こちらとしては不本意ではありますが提訴することを決めました》
(小笠原淳)
【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】 ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。 |
元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【疑惑・北海道立江差高等看護学院のパワーハラスメント問題】 2024年09月25日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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