【社説】:診療報酬改定 安心できる医療体制を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:診療報酬改定 安心できる医療体制を
治療や薬といった医療サービスの対価として医療機関や薬局に支払われる診療報酬の改定内容が決まった。4月から実施される。
改定は2年に1度で、新型コロナウイルスの感染拡大が起きてからは初となる。最大の焦点は、コロナ禍によって突き付けられた医療体制の課題や弱点をどう克服するかだった。
今回の改定は、身近な診療所などを巻き込んで地域の医療機関の連携を促し、コロナ禍など危機時への対応力を強化することなどを柱に据える。将来、新たな感染症も発生し得る。限りある医療資源を有効に活用し、安心できる医療提供体制を早急に築く必要がある。
改定率は昨年末の予算編成で、薬などの「薬価」部分を1・37%引き下げる一方、医師の人件費などに当たる「本体」部分を0・43%引き上げることが決まっていた。これに基づき、中央社会保険医療協議会(中医協)が、治療や入院、投薬など保険が適用される個別の医療行為とその価格を見直し、厚生労働相に答申した。
コロナ禍によって浮き彫りになったのは日本の医療体制の硬直性や脆弱(ぜいじゃく)性だ。
自宅療養中に亡くなる人が相次いだ昨夏の「第5波」では、医療機関の多くを占める民間病院の協力を得る難しさが分かった。大きな中核病院に負担が集中し、病床や人材の確保が難航した。
今回の改定は、診療所の開業医や中小の病院にもコロナ診療に携わるよう強く促しているのが特徴の一つだ。
普段から施設の感染対策を実施している診療所に、報酬を加算する仕組みをつくった。感染の流行時には発熱外来を設ける用意があることをホームページなどで周知することを加算の条件にしている。
コロナに対応する発熱外来として登録しながら名前を公表していない医療機関は全国で3割ほどに上る。広島では7割近くに達している。風評被害や患者が殺到しかねないとの懸念は理解できるが、コロナ診療に及び腰となることは許されまい。
感染症が疑われる患者にとって、最初に頼る「入り口」が地域の診療所である。できるだけ多くの診療所がコロナ対応に協力し、患者の不安としっかり向き合う医療に徹してほしい。
さらにノウハウのある大病院の助言で、診療所が感染症に備える取り組みにも加算が新設される。大病院は重症者を優先し、軽症者や無症状者は診療所が支える役割分担をより明確にすべきではないか。開業医を含めて地域全体で感染症に対応する態勢が望まれる。
患者の負担を軽くする見直しでは、高額になりやすい不妊治療で健康保険などが使える範囲が広がる。人工授精に加え、体外受精も適用対象となる。
晩婚化などを背景に治療を希望する人は増えている。保険の適用で、本人の窓口負担は原則3割になる。子どもを望む夫婦やカップルの経済的負担が軽減されることは歓迎したい。
ただ治療方法は個人差が大きく、恩恵を受けられないカップルもいる。仕事と治療の両立に悩む人も多いだろう。不妊治療に取り組みやすい環境を整備するため、自治体や企業による支援の拡充も求められる。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年02月13日 06:10:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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