【天風録・12.15】:戒厳令の夜に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天風録・12.15】:戒厳令の夜に
この人を執筆に駆り立てるのは、二つの問いだった。「世界はどうしてこんなに暴力的で苦しいのか」「同時に、世界はどうしてこんなに美しいのか」。ノーベル文学賞を受賞した韓国人作家ハン・ガン(韓江)さんである
▲ストックホルムでの受賞記念講演で語っていた。「アジア人女性初の受賞」という以上の注目を集めたのも無理はあるまい。尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が「非常戒厳」を一時宣言するなど韓国の民主主義が危機にさらされたからだ
▲深夜の国会に突入する兵士の蛮行に、1980年の「光州事件」を想起した人は多かったはずだ。民主化を求める市民が軍に虐殺された。ハンさんはこの事件を題材に代表作「少年が来る」を書いた。死者たちの痛みをより合わせ、人類の経験として
▲野党の反対を反国家行為とみなし力で封じようとした尹氏の暴挙は、冒頭の問いの前者に重なる。後者はあの夜、国会周辺に集まった市民の勇気。スマホを手に、あまたの犠牲の上に築いてきた民主社会を守るために
▲二転三転した尹氏の弾劾訴追案がきのう可決された。尹氏には「陰謀論」への傾倒まで指摘されている。韓国社会の新たな痛みを、人類の痛みとして受け止めたい。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天風録】 2024年12月15日 07:00:00 これは参考資料です。転載等は、各自で判断下さい。
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