【社説・12.15】:韓国大統領弾劾可決 国政の混乱、収拾を急げ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.15】:韓国大統領弾劾可決 国政の混乱、収拾を急げ
「非常戒厳」宣言をした韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領に対する、弾劾訴追案がきのう韓国国会で可決された。
7日の1度目は与党が採決をボイコットして不成立にしたが、世論が強く反発していた。2度目の今回、与党から造反者が出て可決されたのは、尹氏が政治的に見放された結果と言える。
尹氏の職務は停止され、今後は憲法裁判所が罷免するかどうかを180日以内に判断する新たな段階に移る。罷免がまだ確定したわけではないが、政権を維持する求心力はもはやなかろう。混迷する国政を正常化するためにも、自ら職を辞す決断が必要だ。
内乱容疑などで大統領府が捜索され、尹氏立件は不可避とみられる。弾劾案不成立の際には「政局安定案は党に一任する」と反省の態度を示したが、12日になって「弾劾であれ、捜査であれ、堂々と対抗する」と開き直りとも取れる談話を出した。訴追案可決後には「最後まで諦めない」とも。非常戒厳宣言を正当化するような態度は論外だ。
直近の世論調査で支持率が就任後最低の11%に下落したのもうなずける。弾劾賛成が75%を占めたのは尹氏の態度が大統領にふさわしくないと国民が判断したのだろう。
尹氏の支持者には、非常戒厳宣言を「憲法の枠内で行われた統治行為であり、司法審査の対象にならない」と正当化する声がある。しかし、いくら国会運営が行き詰まったといっても、政治家を拘束したりメディアを支配したりするような手続きが正当化されるはずがない。軍を国会議事堂などに突入させた責任は極めて重い。
国会に軍部隊を派遣した陸軍特殊戦司令官は、尹氏から電話で「扉を壊して(本会議場の)中にいる議員を引っ張り出せ」と指示されたと明かしている。中央選挙管理委員会に軍を突入させてもいる。その内容は戦時や国家非常事態という、憲法が認めた非常戒厳の行使要件とは懸け離れていると言わざるを得ない。
前国防相が内乱容疑で逮捕されたほか、韓国メディアは警察庁長官なども逮捕されたと伝えた。大統領自身も捜査対象である。韓国という民主主義国家で起きているとは信じられない事態と言えよう。
保守系与党「国民の力」の韓東勲(ハンドンフン)代表は党として弾劾案賛成が必要だと表明したが、尹氏に近い勢力は反発していた。次期大統領選を見据え、党勢回復の時間を稼ぎたいという思惑が国民に見透かされた感がある。
国会で多数を占める最大野党「共に民主党」側にも責任はあろう。政府高官の人事案を何度も否決し、予算案に強硬に反対するなど尹政権を執拗(しつよう)に追い込んだ。政権交代のたびに、こうした戦術が繰り返されることに閉口する国民も少なくないのではないか。
来月に予定されていた石破茂首相の訪韓も延期されるなど、急速に改善が進んでいた日韓関係も不透明になった。日本だけでなく、国際社会の懸念にどう対処するのか。韓国政界は一刻も早い正常化に努めなくてはなるまい。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月15日 07:00:00 これは参考資料です。転載等は、各自で判断下さい。
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