《社説①・11.23》:単身世代の増加 緩やかなつながり、地域に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・11.23》:単身世代の増加 緩やかなつながり、地域に
2050年、長野県は3世帯に1世帯以上が1人暮らしになる。このうち半数以上を、高齢者が占める。
国立社会保障・人口問題研究所がまとめた都道府県別の世帯数将来推計から見えてくる未来の信州の姿だ。
単身世帯が増えていく。孤独にさいなまれたり孤立に苦しんだりする人が出ないよう、支え合いの体制を整えていく必要がある。
この先、結婚や出産をしない人が増え、家族や親族の人数自体が減っていくとみられる。生き方も多様化している。
家族の枠にとらわれず、それぞれの地域で交流や見守りを促す仕組みづくりが欠かせない。自治体と住民で議論を深めたい。
50年には人口規模の大きな「団塊ジュニア世代」が後期高齢者になっている。バブル崩壊後の就職氷河期に重なり、リーマン・ショックの影響も受けた世代だ。
非正規雇用や低い賃金のため、結婚や出産を諦める人が少なくない。この悩みは、今の若年世代にも共通する。
人間関係が希薄さを増す流れは新型コロナウイルス禍でいっそう深刻になった。孤独・孤立は高齢者に限らず、幅広い年代の現在の課題であることを心に留めたい。
孤独を好む人もいる。個々の生き方を尊重しつつ、見過ごせないのは、自ら声を上げられずに望まぬ孤立に陥ってしまう人だ。
地域コミュニティーで孤立しがちな人への声がけや安否確認を、工夫できないか。民生委員や自治組織を中心に、プライバシーに配慮しつつ、顔と顔の見えるつながりを柔軟に編み直したい。
政府や自治体の役割は大きい。孤独・孤立対策推進法が今春施行された。人材育成をはじめ総合的に施策を展開すべきだ。海外では英国がいち早く取り組んでいる。孤独・孤立対策の担当相を置き、かかりつけ医やボランティアと連携した政策などを進める。
国内では、神戸市の取り組みが参考になる。21年度から局横断で施策をまとめる会議体を立ち上げ、幅広い年代の孤独・孤立問題に対応する体制を整えている。
高齢の単身世帯の増加に伴い欠かせないのが、支援や介護を必要とする人たちをケアするネットワークの拡充だ。慢性的に不足している担い手の確保が課題になる。
認知症や身寄りのない高齢者を弁護士や司法書士、社会福祉士らが後見人となり、意思決定などを支える成年後見制度も鍵となる。より使いやすい制度に変えていく必要がある。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月23日 09:31:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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