《社説②》:視覚障害者の踏切事故 再発防止へ国の対策急務
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②》:視覚障害者の踏切事故 再発防止へ国の対策急務
全盲の女性が4月、奈良県内にある近鉄橿原線の踏切内で、電車にはねられて死亡した。
警報機、遮断機が備えられていた。警察によると、渡り切ろうとした時に警報が鳴り、女性は来た方向へ戻ろうとした。踏切内での自分の位置を勘違いしていた可能性がある。踏切の前に設置された点字ブロックは摩耗が激しく、一部欠損していた。
浮き彫りになったのは、健常者を想定した設備では視覚障害者の安全を守れない現実だ。
線路を横切る踏切は足元が不安定なうえ、乗用車が真横を通るなど危険が大きい。警報がいつ鳴り出すか分からないという不安も加わる。
こうした理由から、白杖(はくじょう)での単独行動を指導する歩行訓練士は踏切を極力避けて迂回(うかい)するよう勧めている。だが、自宅周囲の環境や目的地によっては利用せざるをえない場合もあるだろう。
2017年には長野県で70代の男性が、昨年には静岡県で20代男性が、踏切内の事故で死亡している。いずれも視覚障害があり、自分が踏切の中にいると気づいていなかった可能性がある。
踏切の外側に点字ブロックを設置するだけでなく、踏切内にも連続的な突起があれば、視覚障害者は自分の位置を足の裏で知ることができる。だが、設置された例は少ない。
踏切道改良促進法は、「開かずの踏切」や交通渋滞の原因になるなど問題のある踏切を国が指定し、鉄道事業者や自治体に改良を求めることができると定めている。バリアフリーの視点が生かされているか、点検する必要がある。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年06月04日 02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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