【社説・11.14】:不登校最多更新 多様な「居場所」確保したい
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.14】:不登校最多更新 多様な「居場所」確保したい
2023年度に全国の小中学校で30日以上欠席した不登校の児童生徒は34万6482人で、過去最多を更新した。11年連続の増加で、22年度に比べ4万7434人増えた。
とりわけ新型コロナウイルス禍以降に急増し、生活リズムの変化や交友関係の制限などで調子を崩した子どもに支援が十分届かなかった影響が指摘されている。調査した文部科学省が分析する通り、通学を無理強いしない保護者や教員が増えたことも背景にあるのだろう。
学校だけでは対応が難しいケースが増えている。学校外の専門家らの力も結集して多様な「居場所」を確保し、それぞれの子どもが必要とする支援につなげたい。
文科省は今回、原因を探る調査方法を見直した。担任教諭ら学校側と、子どもや保護者とでは、認識に大きな隔たりがあることが外部委託調査で判明したからだ。実態を十分に把握できず、重大ないじめを見逃す可能性もある。相談などで把握した事実に基づいて答える形とし、複数回答も可能にした。
その結果、「学校生活にやる気が出ないとの相談」が最多の32・2%で、「不安・抑うつの相談」が23・1%で続いた。障害や日本語指導などへの配慮や支援に関する「相談」も計13・6%あった。いじめなど複数の要因が重なったケースも少なくない。具体的な把握に近づいたといえよう。もっと深掘りできるよう改善を続けたい。
不登校の子どもの約4割に当たる約13万4千人は学校内外で十分な支援を受けられずにいる。さらに調べると、このうち約9割は担任教諭らから週1回以上、家庭訪問や電話で相談・指導を受けていることが今回初めて分かった。
教職員が接点を持つことは重要だ。そこから養護教諭やスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーといった学校外の専門職、教育支援センター、フリースクールなど学校外の組織につなぐことが求められる。自治体の福祉部門や専門知識を持つNPOとの連携も必要だろう。
安心できる環境で過ごす中で、何に困っているのか、本音の把握に努める。その上で一人一人に最適な支援を考え、実行できる態勢づくりを進めたい。
居場所の一つとして、空き教室を活用した「校内教育支援センター」の設置には、地域でばらつきがある。
例えば公立小中学校への設置率が広島市は100%近いのに、それ以外の広島県内では29・2%にとどまる。県教委は専属教員を配置する「スペシャルサポートルーム(SSR)」の設置を進め、現在42校。推進校をさらに増やす方針で、市町教委が独自に設置する動きも出ている。文科省はさらに後押しすべきだ。
心配なのは、学校とも全く接点がない1万5千人近くの子どもである。学校に不信感を持つ家庭も少なくあるまい。まずは、学校が子どもや保護者と信頼関係を築くことができる態勢を整えたい。そのためにも早急に教員や専門職を増やす必要がある。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月14日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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