【社説②・02.07】:高校無償化 大局的な視点で議論を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・02.07】:高校無償化 大局的な視点で議論を
誰のため、何を目指し、どんな影響があるのか。継続する財源はあるのか。党利党略でなく、大局的な視点での議論を求めたい。
高校の授業料無償化を巡る協議が、自民、公明両党と日本維新の会で続いている。
所得制限のない高校授業料の無償化を看板政策に掲げる維新が、2025年度の予算案を賛成する条件として実現を求める。
与党は段階的に実質無償化となる所得制限の撤廃案を提示したが、維新がこだわるのは私立高も含めた早期の「完全無償化」だ。子どもの希望や能力に応じ、進学先を選択できる機会が広がると主張する。物価高が続く中、家計の負担軽減にもつながるという。
経済格差を埋める無償化は、国が一定進めてきた。公立高に子が通う年収910万円未満の世帯を対象とし、授業料に相当する年11万8800円を支援。私立高(全日制)も同額で、さらに年収590万円未満の世帯に39万6千円を上限に助成する。所得制限による対象外は3割弱という。
完全無償化で新たに恩恵を受けるのは高所得者層であり、高額な私学授業料を賄う予算がかさむ。
浮いた費用を塾代に回し、教育格差が拡大するとの懸念もある。私立の中には同族経営や企業の系列などもあり、一律に公費投入を増やすのが妥当なのか。
維新の吉村洋文代表が知事を務める大阪府や、東京都が独自に始めた完全無償化は、その余波が広がっている。大阪では私立高を第1希望とする志願者が過去20年で初めて3割を超え、府立高の約半数が定員割れに陥った。東京でも都立高の志願者が減っている。
同じ無償ならばと、特色ある教育や施設環境を整えた私立への希望者が増えたようだ。私立は大阪市や京都市など都市部に集中しており、地方から生徒が流出し、過疎に拍車をかける恐れがある。公立高の再編や中学受験の過熱にもつながりかねない。
全国で完全無償化を実施するには年約6千億円が必要とされるが、恒久財源を確保する見通しも立っていない。
今夏の参院選に向けた党の実績づくりで拙速に進めるようなら、将来に禍根を残すだろう。
維新は立憲民主、国民民主の3党で公立小中学校の給食費を無償化する法案を出している。年5千億円近くを要する。限られた財源の中、子どもの貧困や格差の是正を目指すなら、まずこちらの実現を最優先にしてはどうか。
元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年02月07日 16:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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