【主張①・12.27】:日中外相会談 「北京詣で」は感心できぬ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張①・12.27】:日中外相会談 「北京詣で」は感心できぬ
経済的苦境に喘(あえ)ぎ、トランプ次期米政権の対中強硬姿勢を懸念する中国が、米国と友好関係にある国々に、実の伴わない秋波を送っている。
それにうかうかと乗ってしまったのが石破茂政権だ。危惧せざるを得ない。
王毅外相(右)と握手する岩屋外相(代表撮影・共同)
岩屋毅外相が中国・北京で王毅共産党政治局員兼外相と会談した。戦略的互恵関係の包括的推進を改めて確認し、王氏の来年早期の訪日と、その際の「ハイレベル経済対話」開催で一致した。
岩屋氏は会談で「課題と懸案を減らし、協力と連携を増やす第一歩としたい」と述べた。北京で開いた「ハイレベル人的・文化交流対話」では、中国人の観光滞在査証(ビザ)について、10年間繰り返し使用できる数次査証の新設を表明した。
対中認識が甘すぎないか。石破首相は11月の習近平国家主席との首脳会談について「かみ合った」と胸を張った。岩屋氏は首相と同じくらいピントがずれている。
王氏は会談で「(岩屋)大臣は中日関係を一貫して重視しており、高く評価したい」と述べたが、喜んではいられない。石破政権に中国側は猫なで声で接しても実際の対日行動はほとんど改まっていないからだ。
岩屋氏が議題にしたように、沖縄・先島諸島と台湾との間の日本の排他的経済水域(EEZ)に新たな中国ブイが見つかった。岩屋氏は抗議し、即時撤去を求めたが不十分だった。日本周辺の他のブイも含め、ごく短期の期限で撤去を求め、応じなければ日本側が撤去、無害化すると通告すべきだった。
スパイ容疑で捕まった邦人の拘束は解かれず、日本人児童刺殺事件の詳細情報も明かされない。日本産水産物の輸入停止は今も続いている。
極めて残念だったのは、岩屋氏が、靖国神社の社号標を汚し、中国に逃亡した中国人容疑者の引き渡しを求めなかったことだ。英霊を敬う心が乏しいようでは外相失格である。
今必要なのは「北京詣で」ではない。トランプ次期政権要人と対中認識・戦略のすり合わせを始めることだ。日本は独自に外交政策を決める独立国だ。ただし、中国の軍事的脅威は大きい。中国との形ばかりの「意思疎通」を喜ぶよりも同盟国との緊密な連携こそ欠かせない。
元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】 2024年12月27日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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