【社説・12.29】:【2024回顧(上)】:裏金で与党に厳しい審判
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.29】:【2024回顧(上)】:裏金で与党に厳しい審判
「自民1強」の弊害が裏金事件で際立ち、厳しい審判を受け、政権運営の在り方が大きく変化した。かつてなく不信が高まり、その払拭を迫られた2024年の政治だった。
自民党派閥の裏金事件は昨年末に発覚した。組織的な不正行為で政治の信頼は大きく失墜。しかし真相解明の動きは鈍く、抜本対応が求められた政治資金規正法改正も抜け穴や先送りが目立つ内容となった。
支持率が低迷していた岸田文雄前首相は、9月の党総裁選前に退陣を表明。代わりに石破茂氏が新総裁に選出された。党内の疑似政権交代で求心力回復を図ってきた自民だが、「正論」「正直」が持ち味の首相が総裁選時の発言を翻して衆院をすぐ解散。「変節」を指摘され、衆院選で与党は過半数割れした。
与党の最大の敗因には裏金事件が挙がる。だが、そう単純ではないだろう。有権者が問題視したのは、1強体制で生じた「おごり」や国民感覚とのずれではなかったか。
振り返れば第2次安倍政権以降、議論や説明責任を軽視するケースが続いた。森友・加計学園問題や「桜を見る会」などはうやむやで終わらせる一方、安全保障政策や原発政策など国家の将来を左右する方針を、限られた議論で決めてきた。
この政治体質の刷新を託されたのが石破氏だったが、「変節」批判でつまずいた。長く不信が積み重なった末の与党敗北だったと言える。
石破政権が少数与党になり、国会運営は様変わりした。法案や予算案の成立には野党の協力、合意が必要になった。一方、衆院選の民意を踏まえれば「政治とカネ」問題の早期決着も求められた。
臨時国会は、こうした流れに沿う形でとりあえず一歩を刻めたのではないか。最重要テーマの政治改革法案は自民が譲歩し、使途の透明性が高い野党案が受け入れられた。企業・団体献金の扱いは来年に持ち越すが、最低限の成果は残せた格好だ。
24年度補正予算案は、与党が野党の主張を一部受け入れて成立した。国民民主党が求める「年収103万円の壁」の見直し協議はなお続くが、政策協議が透明化し、緊張感も生まれているのは事実だろう。
各党が案を出し合い、一致点を探るのは言論の府のあるべき姿だ。必ずしも「熟議」が徹底されたとは言えないが、強引な国会運営は影を潜めた。石破首相はどう独自カラーを出すかが今後の課題になる。
野党が一点突破で政策実現を迫るのも一つの手法に違いないが、財源論などを考慮した時にバランスを欠くこともある。まだ各党とも他党との距離を探っている最中だろうが、野党の責任は格段に増した。党利優先と見透かされれば不信を招く。国民本位の判断が重要になる。
政治不信を地方選挙からもうかがえた年だった。東京都知事選では政党に頼らない候補が躍進し、兵庫県知事選、名古屋市長選は与野党が応援、または相乗りした候補が敗れた。与野党問わず、引き続き信頼回復に努める必要がある。
元稿:高知新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月29日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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