【小社会・12.29】:帰省の季節
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【小社会・12.29】:帰省の季節
きのうから年末年始の休暇が始まった。この冬は暦通りの人だと9連休。もちろん休めない人も多いとして、高知の街も、ふだんは静かな農山漁村も、帰省組でしばしのにぎわいが訪れる。
作家の重松清さんはかつて本紙に載った随筆に、帰省とは「親と会う」ことと書いている。自らの経験で、難しかったのは都会に出て最初の帰省。「お母ちゃんのご飯が一番おいしいよ」と言うと、「東京でツラい目に遭(お)うとるんじゃろうか」と心配された。
これはまずいと思い、東京の楽しさを話すと「東京で悪い先輩に夜遊びに誘われとるんじゃないか」とやっぱり心配されたという。そんな帰省初心者の若者も、場数を踏んだ子ども連れの世代も、心安らぐ年末年始になるのだろう。
誰しも大事に思う古里だが、地方が細る流れに歯止めはかかっていない。コロナ禍でいったん収まったかに見えた東京圏の転入超過は昨年、12万7千人とまた増加した。
「地方創生ができないと日本は終わる」。地方創生がライフワークという石破首相の強い言葉が報じられた。この年末にまとめた若者、女性の流出を防ぐ支援策は新味を欠く。ただ、ここは今後の有言実行を願いたいもの。人口減に悩む高知県でも流れを生かして雇用や所得、移住環境の充実を地道に粘り強く、と思う。
帰りたくなればいつでも帰って暮らしが成り立つ選択肢がもっと増えてもいい。しばしのにぎわいと言わず。
元稿:高知新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【小社会】 2024年12月29日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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