【視点・12.03】:カント生誕300年 「永遠平和」は市民が創る 論説委員・臼井康兆
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【視点・12.03】:カント生誕300年 「永遠平和」は市民が創る 論説委員・臼井康兆
今年は、ドイツの哲学者イマヌエル・カント(1724~1804年)の生誕300年だ。晩年の著作『永遠平和のために』では、世界平和の実現に向けた条件を提言し、私たち市民の生き方にも示唆を与えている。難解な著作群の「入門編」として読むこともできそうだ。
人の「認識」について革新的な見方を示し、「自由」について思索を深めた偉大な哲学者。恥ずかしながら、私はその主著『純粋理性批判』を読了したことがなく、理解も及ばない。
ただ『永遠平和のために』は比較的読みやすい。カントが示した平和実現への九つの条件は具体的で、現代に通じる先見性もある。
「国家連合を創設する」は、国際連盟や国際連合として実現した。「常備軍を廃止する」は、憲法9条の精神に生きている。「軍事のための国債発行を禁じる」は国家破産を招くとの警鐘で、今の日本には絵空事でない。
興味深いのは「世界市民」という理念が登場することだ。カント哲学が専門の上智大学の寺田俊郎教授によると、この言葉はカント哲学のキーワードだという。
世界市民の意味を読み解くヒントが、別の著書『啓蒙(けいもう)とは何か』にあった。「理性を公的に働かせた時、人はより優れた状態に導かれる。理性の公的使用とは、人が世界市民として語ることだ」との趣旨が述べられている。
抽象的で...、残り 553/1105 文字
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元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【視点】 2024年12月03日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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