【社説①・12.02】:セブン買収提案 消費者優先を貫かねば
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・12.02】:セブン買収提案 消費者優先を貫かねば
国内外でコンビニエンスストア「セブン-イレブン」を展開するセブン&アイ・ホールディングスが海外企業と創業家の双方から買収提案を受けている。
業績不振が背景にあり、セブン側は提案受諾か自力再生か厳しい判断を迫られる。コンビニは今や暮らしに欠かせず、消費者優先を貫く形での決着を望みたい。
先に7兆円規模の買収を提案したのはカナダのコンビニ大手アリマンタシォン・クシュタール。北米を含む8万店舗超の「セブン-イレブン」を持つセブンを傘下に収め、収益力を向上させることが買収の狙いとみられる。
一方、創業家出身でセブン副社長の伊藤順朗氏からも買収が提案された。自社株買い取りによる非上場化を目指すとみられ、創業家を軸としたクシュタールへの対抗策である可能性が高い。
どちらの提案を受けるのか、あるいは双方を拒否して自主経営の道を続けるかは、社外取締役で構成する特別委員会が判断する。
流通業界におけるコンビニの存在は東日本大震災以降、大きく変化した。長時間営業の便利な店舗としてだけでなく、災害時に食料など生活必需品を補給する重要拠点として機能した。公共料金支払い代行などの金融サービスも充実し、地域に欠かせない存在だ。
買収提案を検討する特別委は、買収先が利用者への影響に配慮しているのか否かを丹念に調べた上で最善の道を選択すべきだ。従業員の解雇や賃金低下が起きないよう雇用環境に対する考え方も徹底的に問いただす必要がある。
「大規模な金融緩和」を第1の矢とした経済政策・アベノミクスが引き起こした円安が長引く中、日本企業には割安感が出ている。セブンに限らず海外からの買収提案は当面続くだろう。
収益向上だけでなく地域に貢献し、雇用を守る買収なら国内外を問わず積極的に受け入れたい。過度に閉鎖的な姿勢は企業の新陳代謝の芽を摘み、経済全体の活力を奪いかねない。セブンには消費者と従業員を守る強い決意で試練と向き合うよう強く求めたい。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月02日 07:09:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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