【小社会・12.27】:布袋さん
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【小社会・12.27】:布袋さん
ぷっくり膨らんだおなかと頬、傍らの大きな袋にもたれかかり、気持ちよさそうに居眠りをしている。その寝顔を見ていると、こちらもなんだか幸せな気分になってきた。
いろいろと気ぜわしい師走。高知県立美術館で開かれている「生誕200年 河田小龍展」で、ほっと一息つける絵に出合った。掛け軸の「眠り布袋図」。
おどろおどろしい芝居絵で知られる幕末の絵師、金蔵(絵金)から影響を受けるなど、小龍は時代とともに作風を変えてきた。芝居絵と対照的な七福神の寝姿。つい見入ってしまった。
もともと小龍は松梁、小梁などと号した。龍を描くのが得意で自信もあったのだろう。明治期に読みが同じ小龍としたという。険しい眼の龍が天上をにらむ掛け軸も会場にあった。名前を変えた理由がよく分かった。
その龍(辰=たつ)から蛇(巳=み)へ、バトンタッチをする日が迫ってきた。この1年さまざまな出来事があった。元日の能登半島地震に始まり、国内の政治状況の変化、各地の紛争…。昨日の本紙によると国内の平均気温が連年で最高を更新しそうだという。「異常な高温」。気象庁担当者の言葉は重い。来る年も多くの課題に向き合わねばなるまい。
布袋様の袋には何が入っているのだろう。福の神だけに暮らしに役立つたくさんの知恵が詰まっているのかもしれない。お知恵を拝借? いやいや、居眠りの邪魔をしてはならない。まずは自分たちで―。
元稿:高知新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【小社会】 2024年12月27日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます