【社説・11.20】:石破政権と核禁条約 オブザーバー参加、決断を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・11.20】:石破政権と核禁条約 オブザーバー参加、決断を
第2次石破内閣の発足から1週間余りが過ぎた。28日からの臨時国会を前に、少数与党の自民党と公明党は目下の重要懸案について野党側との擦り合わせに腐心している。経済対策とも連動する「年収の壁」問題であり、政治資金規正法の再改正である。
一つ重要なことを忘れてはいないか。2017年の制定以来、日本政府が背を向けている核兵器禁止条約の締約国会議に、まずはオブザーバー参加を果たすかどうかだ。
連立政権の中核を担う公明党の斉藤鉄夫新代表の決意は重い。先週末に地元の広島で原爆慰霊碑に献花後、長年の友人である石破茂首相にオブザーバー参加を求めていく意向を示した。党の選挙公約として主張してきたが、さらに踏み込んだとみていい。
公明は衆院選で議席を後退させ、結党60年にして危機にある。平和の党の基本に立ち返り、存在感を発揮するためにも斉藤氏には今すぐ動いてほしい。仮に実現しなければ連立の維持に関わるなどと、強く出る覚悟もあっていい。
衆院選では50議席増の立憲民主党をはじめ、この条約にオブザーバー参加もしくは署名・批准を求める勢力の合計が急伸した意味も決して小さくない。公約にこそ挙げてはいないが党首が前向きな発言をした日本維新の会、国民民主党も入れると過半数をゆうに超えた。野党側も積極的に働きかけるべきだろう。
政権のスタンスも変わってきている。オブザーバー参加は真剣に考える、というものだ。岸田政権までの後ろ向きな態度では、世論が納得しないと踏んだのだろう。それでも日本がことし国連に提出した核兵器廃絶決議案などを見ると、条約への前向きな姿勢は示していない。
もはや機が熟したのではないか。臨時国会の召集翌日に首相の所信表明演説がある。米ニューヨークで来年3月にある第3回締約国会議に政府代表を派遣すると表明したらどうか。加えて、石破氏の持論だった「核共有」を政府与党として考えることはきっぱり断念してほしい。
むろん「核兵器なき世界」をうたう以上、条約に署名・批准するのが筋だ。とはいえオブザーバーでもできることはある。核保有国と非保有国の橋渡し―。岸田政権が繰り返し唱えた被爆国の役割を果たすためには、少なくとも議論の場にいる必要がある。
同盟国の核抑止力に固執する立場からは米国の反発をおもんばかる声もあろう。バイデン大統領が退くことが転機と考えられないか。トランプ氏が2期目にどんな外交政策を取るのか予測が難しく、石破首相との早期会談も消極的のようだ。この際、どこまで遠慮が必要なのか。米同盟国ドイツは締約国会議に堂々とオブザーバー参加している。
日本被団協へのノーベル平和賞授賞式が12月10日に迫った。核廃絶を求める国際世論に追い風が吹く一方で、ロシアによるウクライナへの核使用の危機が続くなど安心して祝える情勢でもない。だからこそ被爆国が民意を踏まえ、次への一歩を決断したい。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月20日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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