【社説②】:銀座で仮面強盗 治安を揺るがす不敵な犯行だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:銀座で仮面強盗 治安を揺るがす不敵な犯行だ
日本有数の繁華街で起きた強盗事件は、多くの通行人らに目撃され、一部始終を撮影した動画が瞬く間に拡散された。不敵で粗暴な犯行が社会に与えた衝撃は大きい。
8日夕、東京・銀座の目抜き通りにある腕時計店に、白い仮面をかぶった男3人が押し入った。店員に刃物を突きつけて「殺すぞ」と脅し、工具でショーケースを割って、高級ブランドの腕時計など100点以上を強奪した。
男たちは店の前に止めていたワゴン車で逃げた。その後、3キロ離れた場所でワゴン車が見つかり、警察は近くの建物に侵入した容疑で高校生を含む16歳~19歳の計4人を逮捕した。警察は強盗事件との関連を調べている。
現場は高級ブランド店が立ち並ぶ一角で、当時はまだ明るく、多くの人通りがあった。実行犯の男らは目撃されることをいとわず、10分間にわたって商品を奪い続けた。異様な光景である。
事件の様子は、通行人によってスマートフォンで動画撮影され、SNS上に次々と投稿された。
非現実的な状況に虚を突かれ、身の安全の確保や110番より撮影を優先させたのかもしれない。だが、撮影に夢中になっている間に、事件に巻き込まれる恐れもあったのではないか。
こうした現場の状況が、事件の異常さを一層際立たせた。
捕まることを恐れないかのような無謀な犯行を、実行犯は自ら進んで行ったのか。背後に指示役がいるのではないか。警察は、事件の全容解明を急いでほしい。
東京では3月以降、上野や渋谷の繁華街でも、開店時間中の貴金属店が襲われる強盗事件が相次いで起きている。渋谷の事件で逮捕された1人は「SNSで依頼を受けた」と供述している。
SNSでメンバーを募る「闇バイト強盗」が多発している。実行役を逮捕しても、指示役が次の犯行を計画すれば、事件は断ち切れない。指示役の摘発が不可欠だ。若者が安易に闇バイトに応募する状況も食い止めねばならない。
こうした事件が頻発するようなら、店側も防犯体制を改める必要があるだろう。割れにくいショーケースにしたり、商品の展示方法を変更したりするなどの対応を検討してはどうか。
衆人環視の中で凶悪事件が起き、その様子が国内外に発信される事態は、日本の治安への信頼を揺るがしかねない。社会への挑戦とも言える犯行の再発を、いかに防ぐかが問われている。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年05月10日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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