【社説・12.21】:中学生殺傷事件 未来奪った凶行 解明急げ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.21】:中学生殺傷事件 未来奪った凶行 解明急げ
胸に描いた未来を突然奪われた無念はいかばかりか。遺族の怒り、悲しみの深さは察するに余りある。
このような理不尽な悲劇が二度と起きない社会を私たちは築かなくてはならない。
北九州市小倉南区のファストフード店で先週末、塾帰りの中学3年の男女2人が男に刃物で刺され、中島咲彩(さあや)さん(15)が亡くなった。男子生徒は腰に深い傷を負った。
福岡県警はおととい、現場近くに住む平原政徳容疑者(43)を、男子生徒に対する殺人未遂容疑で逮捕した。容疑を認めているという。県警は中島さん殺害にも関与したとみて調べている。
県警によると、平原容疑者は犯行の十数分前、車で店の駐車場に来ていた。店に入ると注文の列に並んでいた2人に真っすぐ近づき、無言で1回ずつ刺したとされる。
動機について「詳細な供述は出ていない」という。被害者との面識はなかったとみられ、店と容疑者とのトラブルも確認されていない。
なぜこの店で2人が狙われたのか。再発防止策に生かすためにも、凶行の全容を明らかにする必要がある。
男子生徒は命に別条はないものの、心にも深刻な傷を負ったことだろう。一日も早い心身の回復を祈らずにはいられない。関係機関には万全の手だてを講じてほしい。
北九州市では発生から容疑者逮捕までに、延べ1万人以上の児童、生徒が学校を休んだ。容疑者逮捕で市民の多くがほっとしているが、まだ怖がったり、動揺したりしている子どももいるだろう。
被害者が通っていた中学には複数のスクールカウンセラーが配置された。引き続き地域全体で子どもの心のケアに力を尽くしたい。
無差別に相手を襲う通り魔的犯罪が後を絶たない。県警は今回も同様の事件だった可能性があるとみている。
現場近くで中高生の子どもを育てる母親からは「子どもに気を付けてと言っても、それ以上、何をアドバイスしたらいいのか分からない」と戸惑う声が出ている。
受験シーズンを控え、夜遅くまで塾などで勉強する子どもが多い時期だ。模倣犯を心配する子どもや保護者も少なくないだろう。
飲食店などに入る前に周囲の様子を確認する。不審な人を見かけたら、すぐ店員に伝える。帰宅時は友人と一緒に帰る。1人で帰るときは、遠回りでも人通りが多く明るい道を通る。こうした防犯の基本を学校や家庭で改めて話し合いたい。
飲食店や商業施設などの備えも欠かせない。
火災や強盗事件を想定した防犯訓練に限らず、刃物を持った不審者が侵入した事態を想定して訓練を実施している商業施設もある。
犯罪は時代とともに多様化し、複雑化する。それに適切に対応できる不断の取り組みが企業にも求められる。
元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月21日 06:00:00 これは参考資料です。転載等は各自で判断下さい。
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