【社説①】:LGBT法案 首相と自民の見識が問われる
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:LGBT法案 首相と自民の見識が問われる
この法案の内容で、女性の安全を守れるのか。教育現場は混乱しないのか。様々な懸念を残したまま、拙速に法整備を図ることは許されない。
性的少数者(LGBT)への理解の増進に関する法案は今日、衆院を通過する見通しだ。衆院での審議は3時間に満たない。16日にも成立する公算が大きい。
法案は、自民、公明両党と、日本維新の会、国民民主党の4党の修正協議でまとまったものだ。
当初の与党案は「性同一性を理由とする不当な差別はあってはならない」と規定していた。このうち、「性同一性」の表現を、維新・国民案にあった「ジェンダーアイデンティティ」に改めた。
意味は同じだというが、あまりにもわかりにくい。理解しにくい言葉を使いながら、「理解増進」とは何事か。
心と体の性に違和感がある人に寛容な社会をつくることは大切だ。だが、憲法は「法の下の平等」を定めており、差別は今でも許されていない。新たに性的少数者に特化した法律を、内容も曖昧なまま制定する必要はあるまい。
各党は、新法がもたらす影響を真剣に考えるべきだ。
悪意を持った男性が「女性だ」と自称し、女子トイレなどを利用する事案は現実に起きている。こうした行為は現行法で禁じられているが、新法を盾に、現行の禁止規定を「不当な差別だ」と主張する口実に使われかねない。
法案に、LGBTに関する教育を「家庭及び地域住民その他の関係者の協力を得つつ行う」と記したことも問題だ。過激な主張を掲げる団体が学校に圧力をかけ、発育を無視した性教育を迫る事態が外国では起きているという。
自民党の法案提出者は「法案は理念法で、新しい権利を加えるものではない」と説明している。
しかし、新法を契機に 恣意 的な解釈が横行し、性や結婚に関する民法などの規定を巡って違憲訴訟が相次ぐ恐れは否定できない。
そもそも自民党には法整備に慎重な議員が多かった。先月18日に法案を提出した後も、継続審議になるとの見方が広がっていた。
会期内成立に 舵 を切ったのは、岸田首相だという。法制化を強く求めてきた公明党への配慮からだとされている。
衆院選の候補者調整を巡って、ぎくしゃくした公明党との関係を修復する狙いがあるのだとすれば、筋違いも甚だしい。首相は、自らの見識が問われていることを自覚してもらいたい。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年06月13日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断さい。
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