《社説①・11.22》:香港民主派実刑 圧殺に抗する声広げたい
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・11.22》:香港民主派実刑 圧殺に抗する声広げたい
選挙で議席を増やそうとする活動が、政府を転覆する企てとして処断される―。民主化運動が息の根を止められるさまを見せつけられるようである。
香港の高等法院(高裁)が、民主派の活動家ら45人に禁錮4年2月から10年の判決を言い渡した。2020年の立法会(議会)選挙に向け、予備選を実施したことが国家安全維持法に違反するとして一斉に逮捕されていた。
予備選は、民主派の候補者が競合して支持者の票を食い合わないよう、候補を絞り込む目的だった。判決は、立法院の過半数を得て予算案を否決し、香港政府の行政長官を辞職に追い込むことを画策したと認定し、政府転覆の共謀にあたると結論づけた。
香港大の元准教授で、予備選を企画、運営した戴耀廷氏が首謀者と見なされ、最も重い禁錮10年を言い渡されている。学生らの運動の先頭に立ってきた活動家の黄之鋒氏は4年8月だ。
起訴事実を争った被告は重い量刑になったという。ネットメディア「立場新聞」の元記者、何桂藍氏は禁錮7年とされた。訴追した検察と裁判所が一体と化し、盾つく者には容赦しないと言わんばかりの強権を振るった形だ。
国安法に関する裁判は、行政長官が指名した裁判官が審理にあたる。およそ公正な裁判にはなり得ない。行政府の統制の下、司法の独立は根元から崩れ、香港の自治と自由は支えをなくした。
国安法は、中国の中央政府が香港の頭ごなしに制定した強力な治安法だ。国家の分裂や政府の転覆を図る行為、外国勢力との結託を禁じる。19年に大きなうねりとなった街頭での抗議活動は、強大な力によって封じられた。
民主活動家らの多くが逮捕、収監されたほか、体制を批判してきた報道機関も既に壊滅に近い状態に陥っている。国安法を補完する国家安全条例によって言論の統制は一段と強まり、香港は物言えぬ社会に変わり果てた。
立法会と行政長官の選挙制度も改変され、民主派の排除が徹底された。英国からの返還にあたって約束された「一国二制度」は、内実を失っている。状況は厳しさを増すばかりだ。
であればこそ、国際社会は香港に関心を向け続け、中国政府に厳しい姿勢で向き合う必要がある。国安法による弾圧を逃れて、日本を含め各国に散らばった民主派の活動家らは、諦めずに声を上げ続けている。連帯し、支える動きをさらに広げたい。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月22日 09:31:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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