【社説②・11.19】:日中首脳会談 対話重ね信頼醸成図れ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・11.19】:日中首脳会談 対話重ね信頼醸成図れ
石破茂首相が訪問先の南米ペルーで、中国の習近平国家主席と初めて会談した。
日中両国の共通利益を拡大する戦略的互恵関係の推進や、首脳レベルを含む相互往来に取り組む方針で一致した。
中国が日本周辺で軍事活動を活発化させるなど、両国間の懸案は山積している。だからこそ両首脳が対話を重ねて意思疎通を図ることが欠かせない。
米国第一主義を掲げるトランプ前大統領の返り咲きが決まった。米中対立はさらに激化することが予想され、国際情勢の先行きは不透明感を増している。
こうした時こそ日中は関係の改善を図り、東アジアの安定に尽力することが求められる。
会談で首相は、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出に伴って中国が停止した日本産水産物の輸入再開を早期に実現するよう要求した。
習氏は輸入規制を段階的に緩和する9月の日中合意を着実に履行するとしたが、具体的な時期は示さなかったという。
道内産のホタテなど日本の水産物は打撃を受けている。中国は早期に再開するべきだ。
首相は中国軍機の領空侵犯や沖縄県の尖閣諸島を含む東シナ海情勢など、中国の活動を「極めて憂慮している」と伝えた。
また、中国で拘束された邦人の早期釈放や、中国・深圳での男児刺殺事件を踏まえた邦人の安全確保も要請した。習氏は「日本人を含む全ての外国人の安全を確保する」とした。
中国としてはトランプ氏の就任に備えて対日関係を安定化させたいのが本音だろう。しかし中国の威圧的な振る舞いには不信感が増すばかりだ。誠実な対応を見せない限り、関係改善は程遠いと言わざるを得ない。
首相は米国のバイデン大統領、韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領との3カ国首脳会談にも臨んだ。経済や安全保障分野の協力強化に向けて調整を担う事務局を開設することで合意した。
中国や、軍事協力を進める北朝鮮とロシアに対峙(たいじ)することが念頭にある。多国間協力の枠組みに否定的なトランプ氏が復権する前に、連携を揺るぎないものにする狙いがあろう。
日米韓が連携を深めることは大事だが、対立を激化させない取り組みが必要である。
首相は帰国前に訪米してトランプ氏との会談を模索していたが、見送られた。来年1月の就任前は各国要人と会わない方針を決めたためだという。
会談を急がず、野党とも議論しつつ従属的ではない日米関係のあり方を練り直したい。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年11月19日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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