【HUNTER・08.30】:ヤジ排除「警察が一貫して対応」― 当事者意識欠く鈴木北海道知事
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【HUNTER・08.30】:ヤジ排除「警察が一貫して対応」― 当事者意識欠く鈴木北海道知事
8月19日に最高裁決定が出た「首相演説ヤジ排除事件」国家賠償請求裁判の判決について、地元報道から所感を求められた被告・北海道の鈴木直道知事は、裁判対応の方針をめぐる自身の責任への言及を避け、改めて当事者意識の不在を表明した。判決が指摘する表現の自由については「しっかりと守る」としつつ、同時に「演説を聴ける環境づくりも大切」と発言、ヤジはいわゆる選挙妨害にあたらないとする確定判決を無視した的外れな主張を展開した。
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発言があったのは、8月27日午後に設けられた知事定例記者会見。地元民放HBCの質問を受けた鈴木知事の回答を、以下に全文採録する。
「本件につきましては、警察官の職務執行を管理し、事実関係を把握している道警察において、第一審から一貫して方針を判断して対応したものです。今後の対応につきましても、道警察において適切に進められていくものと考えております。また警察庁長官においても、今回の件をふまえてですね、『警察官の行為が一部違法とされたことは警察庁としても真摯に受け止めなければならない』という発言をされています。判決の決定を受けまして、私としても伊藤・道警察本部長とお話しさせていただきました。伊藤本部長は道警察の受け止めとして『このたびの司法判断を真摯に受け止め、法令に基づく適正な職務執行に努めて参ります』ということでございました。私からも『適切な職務執行に努めていただきたい』ということを道警本部長にお伝えしたところでございます。今後の対応につきましては、道警察において、報道機関の皆様からのさまざまなご質問なども含めてですね、道民の皆様に対しても丁寧に説明していきたいということであります。適切に進めていかれるものと考えております」
あくまで主語は自身ならぬ「道警察」。被告となった自治体の長としての責任放棄に等しく、一審・札幌地裁の全面敗訴判決に控訴、また高裁の一部敗訴判決に上告した判断についての主体的な釈明は皆無だった。これに「具体的には今後どういうことを求めていくのか」と再質問が重ねられると、鈴木知事はこう回答、否、無回答を返した。
「先ほどお話しさせていただきましたが、道警としてもですね、たとえば表現の自由については基本的人権として保障されているわけですから、尊重されなければならない重要な権利ということが当然あるわけですので、その表現の自由について『特定の意見を規制することはもとより考えていない』ということについてもコメントされたというふうに報告を受けております。やはりあの、私も街頭演説などをする立場でもあるわけですが、一般論として申し上げればですね、やはり聴衆の方々にとって、演説を聴いて誰に投票するかを決める大切な、まあそういった場でもありますので、表現の自由、これをしっかりと守る、そして演説を聴ける環境づくり、この両方を尊重する、このことが大切ではないかというふうに考えています」
国賠の一審原告らが繰り返し指摘しているように、鈴木知事はヤジ排除のあった日、まさに安倍晋三総理大臣(当時)の演説の場に立ち会っている。広い意味でヤジ排除事件の当事者ともいえる立場だが、口を突くのは飽くまで「一般論」。一連の問題は知事にとって徹頭徹尾、他人事のようだ。
なお今回の最高裁決定をめぐっては、一部敗訴した道警、及び道警を監督する道公安委員会が筆者の取材に応じ、次のようにコメントしている。
道警…『当方で上告受理申し立てをした事件については、当方の主張が認められなかったものと受け止めている』
道公安委…『個別の案件について取材対応及びコメントは致しかねます』
また排除翌年に一審原告の桃井希生さん(全面勝訴確定)が現場の警察官らを特別公務員暴行陵虐などで告訴した事件で、警察官全員を不起訴処分とした札幌地方検察庁の決定について、当時の対応の適正性を尋ねる筆者の質問に、同地検の石井壯治次席検事は「着任前のことであり事実関係を承知していないので、お答えする立場にない」と答えている。(小笠原淳)
【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】 ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。 |
元稿:HUNTER 主要ニュース 社会 【裁判・地方自治・北海道・8月の最高裁判所決定により一審原告らの「一部勝訴」が確定した「首相演説ヤジ排除事件」国家賠償請求裁判の判決】 2024年08月30日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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