《社説②・12.27》:日中外相が会談 関係安定へ対話と行動を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②・12.27》:日中外相が会談 関係安定へ対話と行動を
国際情勢が不確実性を増す中、対話の促進を関係の安定化につなげられるかが問われている。
岩屋毅外相が中国を訪問し、王毅外相と会談した。日本の外相による訪中は1年8カ月ぶりだ。
会談では、共通の利益を追求する「戦略的互恵関係」を推進し、「建設的かつ安定的な関係」を構築する方向性を確認した。来年の早い時期に王氏が訪日し、閣僚級の「日中ハイレベル経済対話」を開催することでも一致した。
岩屋氏は、中国人観光客向けの査証(ビザ)発給の緩和を表明した。中国も、日本人の短期滞在ビザの免除措置を再開している。
中国が対話と交流に前向きな姿勢を示す背景にあるのは、国内経済の減速だ。来月に就任するトランプ次期米大統領が「貿易戦争」も辞さない姿勢を示していることに備える思惑もある。
人的往来の活性化によって、相互理解が深まることが期待される。双方で悪化している国民感情の改善につなげるため、一層の取り組みが欠かせない。
とはいえ、両国の間には多くの懸案が横たわっている。
日本人学校の児童らに対する殺傷事件やアステラス製薬社員のスパイ罪での拘束に関し、中国の情報開示は極めて限定的だ。在留邦人の不安は解消されていない。
東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出を巡っては、両国の合意に基づき中国が10月に周辺海域の海水サンプルを採取した。安全を確認したうえで日本産水産物の輸入再開を判断することになっているが、中国は慎重姿勢を崩していない。日本は早期の再開を粘り強く働きかける必要がある。
安全保障面での課題も多い。中国軍は東シナ海で活動を活発化させている。岩屋氏は沖縄県・与那国島南方の日本の排他的経済水域(EEZ)内に中国が設置したとみられるブイが新たに見つかったと指摘し、撤去を要請した。
王氏は「中日関係が安定すればアジアがさらに安定し、世界でより重要な役割を果たせる」と述べ、関係改善の意義を強調した。そうであれば、日本の懸念を拭う努力を尽くすべきである。
今、両国に求められているのは、信頼醸成を進め、戦略的互恵関係を具体化する行動だ。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月27日 02:03:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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