桜吹雪

気が付いたら、桜が満開になっていた。

お昼、お弁当を早く食べてお花見に千鳥が渕まで行く。ゆっくりと桜並木を歩く。夜桜の宴会用の場所取りのシートがすき間無く敷き詰められている。退屈そうに、その上で寝ている人達がいる。ウチの会社では、桜見はやらない。うらやましいような、無くてホットするような・・・

去年は若い事務の女性がいたので、昼休みに二人で歩いた。その前の年は、事務の女性は三人だったので、三人で花見弁当を買って、桜を見ながらここで食べたっけ。

今は、女性は私一人になってしまった。ベンチに腰掛け、風が吹くたびにキラキラ輝く桜吹雪を見ていると、何となくうら悲しくなって来る。事務所が渋谷にあった頃は、女性が４人もいた。そして１０年前にある会社の子会社になり、今の所に移ってきた。その間に事務のパソコン化が進み、事務職が私一人になっても仕事は大丈夫になった。女性が複数だと、いろいろ大変な事もあるけど、やっぱり一人は寂しい時がある。こんなに、桜がきれいなのに、それを共用して話す人がいない。周りは、みんな仲間と歩いているのに・・・

一人で見上げる桜は、物悲しい。見上げれば青い空にキラキラ薄桃色に光り、風が吹けばキラキラの吹雪となりお堀に散らばる。車が通れば、戯れるように道路をキラキラと転がる。遠い遠い昔の、思い出したく無い思い出が、忘れてしまった思い出が、鍵をかけてしまった思い出が、キラキラとこぼれ出して来そうで怖い。