「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

        田母部将軍と山下奉文将軍の更迭

2008-11-02 05:10:38 | Weblog
田母部航空幕僚長が外部の懸賞論文に”日本は侵略国家ではなかった”を発表した
という理由から更迭された。航空幕僚長といえば、昔でいえば将軍で、空自のナンバ
ーワン。そのナンバーワンの考え方が政府見解とあいはんするとなれば、更迭もやむ
をえない。しかし、これが先の大東亜戦争が”侵略”であったか、どうかという問題とは
別問題である。

この更迭から僕は戦争初期、山下奉文将軍(第25軍司令官)が昭南(シンガポール)
市庁舎バルコニーで行った”新附の民”演説を想起した。昭和17年4月29日の天長節
(天皇誕生日)の席上、山下司令官は現地の住民に対して”このたび大日本帝国の
臣民となれるマレー、スマトラ民衆は,光輝ある帝国の”新附の民”たるの光栄に感激
し生業に励むべし”と挨拶した。”新附の民”とは平安時代、新しく登録された帰化民
のことである。この発言は軍政の骨格である「南方占領地区行政実施要領」に反する
もので山下司令官は更迭された。

軍隊経験がない僕でも、国家として見解と異なる自分の意見を防衛省の制服組幹部
が軍律軍規に反して外部に発表するのは軽率であり間違っている。更迭は仕方がない。
しかし、戦争についての歴史観は個人それぞれが違う。山下将軍の”新附の民”発言を
みれば当時、たとえ一人の将軍の考えであるとはいえ、このような見解もあった。しかし、
これでもって大東亜戦争は”侵略戦争”だったというのも危険である。