★ 前回のワーグナー『ニーベルンゲンの指輪』(四部作)に続き、ワーグナーと同年生まれで、イタリアの巨星ヴェルディのオペラ『ドン・カルロ』を、フェリーぺ二世の側から取り上げてみた。
「無敵艦隊」を誇り、世界に冠たる強大なスペインの内幕を描いたものである。
リッカルド・ムーティ指揮、ミラノスカラ、歌手はドン・カルロにパヴァロッティ。
Don Carlo ( Parte 10 de 17 )
・・・5分30秒あたりから皇子ドン・カルロの反逆が・・・
王宮前の広場、フランドルからの使者がスペイン皇帝、フィリッポ(フェリーぺ)二世に、フランドル侵攻を思い留まるよう願い出るが聞き入れられない。フランドルに以前から同情していた皇子ドン・カルロは、ついに父である皇帝に剣を抜く。
驚く人々、しかし誰も皇子ドン・カルロを取り押さえる者はない。
皇帝は自ら剣を抜くが、その時、ポーザ候ロドリーゴが皇子に剣を差し出すよう求める。
ロドリーゴは皇子の学友であり無二の親友でフランドル解放の同志でもあった。
また皇帝の苦悩も察していた、皇帝は「この宮廷で唯一の男」とまで信頼していたのがロドリーゴであった。
絶望する皇子ドン・カルロ、そして新教徒の刑は実施され、天からは祈りの声(ソプラノ)が聴こえる。
Don Carlo ( Parte 12 de 17 )
悩んだ皇帝は、ローマカトリックの異端宗教裁判の大審問官を招く。
自分に反逆した皇子をどうすればいいかと問う。
「世がおさまるために私はわが子を犠牲にできるのか、自然な愛情が・・・私はキリスト教徒だが」
大審問官は「神も御子キリストを犠牲にされた」と冷たく答える。
そしてさらに皇帝に詰め寄る。
大審問官「スペインは異端が支配したことはない。その首謀者に比べると皇子などたいしたことはない。真の敵は皇帝が心を許している者だ。(ポーザ候ロドリーゴのことを指す)」
皇帝は「この宮廷でやっと見つけた心を許す友だ。」
大審問官「その弱い手でローマカトリックの支配を壊すつもりか! ポーザ候ロドリーゴを引き渡すのじゃ!」
皇帝「それはできない、断る!」
大審問官「ここでの話でなくてはそなたも異端裁判所に明日でも呼ばれることになろう」
皇帝「なんという厳しいことを。私は苦しんでいる」
大審問官「私はすでに二人の皇帝の戴冠式を執り行った。そなたは強大になったこの国を滅ぼすつもりか、愚か者めが!」
皇帝「どうぞ平和を!」・・・・
そして大審問官は去り、皇帝は嘆く。「ああ、王冠は祭壇の前にひざまずかねばならないのか・・・」
★ シラーの原作をオペラに作曲したヴェルディ、このオペラはスペインでは上演禁止になったが、ローマカトリックの権威とフランドルでの新教徒弾圧を描いた歴史劇であり、実在の人物が登場している。
味わい深く、素晴らしいオペラである。
今回は皇帝フィリッポ二世(フェリーぺ二世)を中心に取り上げたが、ヴェルディのオペラはどの登場人物にも光を当てていて実に見事、ワーグナーに対し、オペラの巨星はヴェルディを置いてはない。
★ 明日はヴェルディやシラーが最も愛した憂国の士ポーザ候ロドリーゴ、そしてフェリーぺ二世(イタリア語読みではフィリッポ二世)の妃、エリザベッタ、など終幕をとりあげる予定です。
ロドリーゴはやはりカップッチッリが望ましい。活躍の時代が違うので仕方ないけれど、ここのロドリーゴ役のコーニも素晴らしい。