コジ・ファン・トゥッテ(女はみなそのようなもの)は、私の好きなオペラ作品トップ3に入るお気に入りです。反道徳的かもしれないけど男女の心理の本質をついたとも言えるテーマ、テンポの良い音楽、美しい数々の重唱曲、オペラの醍醐味を十二分に味わえる作品だと思います。
今回の新国立劇場の舞台(演出ミキエレット)は数年前の新国初演以来の再演とのことですが、このプロダクションがとっても楽しめました。夏の森林のキャンプ場を舞台にしたこの演出。第1幕では、違和感こそ感じないものの何でキャンプ場なのかと、不思議に思っていたのですが、第2幕になって分かりました。夏のキャンプ場の夜に展開する、愛をささやく男と、求愛に揺れる女心。なるほど、暗いキャンプ場ほど愛の囁きがフィットする場は無いでしょう。18世紀のナポリを舞台にした原作が、完全に現代の恋物語として、新しい息を吹き込まれていました。回転舞台が有効に使われていてキャンプ場の空間を上手く表していたし、山小屋、木々の緑、池の水色などの色合いや照明も美しく、とっても良く出来た演出でした。
歌手陣ではフィオルディリージ役の ミア・パーションのソプラノが光ります。パーションは一昨年のBBCプロムスで聴いて以来(こちら→)ですが、相変わらず透き通るような美声です。あと、フェルランド役のパオロ・ファナーレのテノールも柔らかく聞かせます。第2幕の2人の重唱は聴いているだけでとっても幸せな気分に浸れました。デスピーナ役の天羽 明惠さんも頑張っていました。ただ、まだこの役柄には慣れてないのかなあという気がしました。デスピーナはこのオペラでは隠れたキーパーソンで、この役の出来によって公演の躍動感が変わってきます。決して悪いとは思いませんでしたが、もう少し目立っても良い役です。
東フィルによる演奏は、前半は違和感がありました。指揮者によるものなのか、オケによるものかはわかりませんが、コジらしい、溌剌さやキレがあまり感じられず、美しくはあるけども何か平板なメリハリが足りない演奏のような気がしたのです。後半は持ち直した感がありましたが、素晴らしかった前回の「ナブッコ」の演奏と比較すると、ちょっと物足りない感じです。
ラストシーンはハッピーエンドではなく、最近良くある破局型の終わり方でした。個人的には、最後は大円段で終わった方が好きなのですが、現代のカップルだったら、こうなっちゃうでしょうね。
まあ幾つか気になるところはあったものの、とっても楽しんだ3時間半弱でした。やたらブラボーを連発する男性が4階にいたのはやや興ざめでしたが、観衆も大変盛り上がっていたと思います。やっぱり、コジは素晴らしいオペラです。
2013年6月9日 14:00
指揮:イヴ・アベル
Conductor: Yves Abel
演出:ダミアーノ・ミキエレット
Production: Damiano Michieletto
美術・衣裳:パオロ・ファンティン
Scenery and Costume Design: Paolo Fantin
照明:アレッサンドロ・カルレッティ
Lighting Design: Alessandro Carletti
再演演出:三浦 安浩
Revival Director: Miura Yasuhiro
舞台監督:村田 健輔
Stage Manager: Murata Kensuke.
合唱指揮:冨平 恭平
Chorus Master: Tomihira Kyohei
芸術監督:尾高 忠明
Artistic Director: Otaka Tadaaki
(Cast)
フィオルディリージ: ミア・パーション
Fiordiligi:Miah Persson
ドラベッラ:ジェニファー・ホロウェイ
Dorabella:Jennifer Holloway
デスピーナ:天羽 明惠
Despina:Amou Akie
フェルランド:パオロ・ファナーレ
Ferrando:Paolo Fanale
グリエルモ: ドミニク・ケーニンガー
Guglielmo:Dominik Köninger
ドン・アルフォンソ: マウリツィオ・ムラーロ
Don Alfonso:Maurizio Muraro
合唱:新国立劇場合唱団
Chorus: New National Theatre Chorus
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
Orchestra: Tokyo Philharmonic Orchestra