先月読んだ同著者による『演劇入門』の対となる本。前著が戯曲を書くプロセスを追体験することを通じて演劇について紹介したのに対して、本書は本書は筆者が行うワークショップの流れに沿って演技や演出についての筆者の考えが解説される。
平田氏の著作はこれで3冊目だが、平易な言葉を使って論理的かつ具体的に演劇について説明する力にはいつも感服させられる。このブログで、筆者の考えを簡単にまとめてしまうより、未読の方は是非、本書の読んでいただき、筆者の考えの流れのようなものを感じとって頂いた方が良いと思う(逆に、簡単にまとめるのも至難の技)。演出という仕事の奥深さを感じることができる。
また、「イメージを共有する」「コンテキストを擦り合わせる」といった演出家の仕事や演劇が、我々の日常におけるコミュニケーションそのものでもあることにも気付かされる。
最終章である六章の「演出とは何か」では、近代演劇の創始者と言われ演劇の内面性を重視したスタニスラフスキと、対極的とも言える「観客が常に冷静に物語を観察し、社会への批判能力を高めるようにいう「叙事演劇」」を主導したベルトルト・ブレヒトの二人の演出家を比較し、筆者の演出論が展開される。より深い演劇論、演出論への興味を興味をかきたてる内容だった。