その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

ダン・ブラウン (著), 越前 敏弥 (翻訳) 『インフェルノ(上) (下)』 角川書店

2014-09-19 00:37:43 | 
 

 ダン・ブラウンのラングドン教授シリーズ第4弾です。新刊として出版された直後の、昨年12月に図書館で予約したのですが、10ヶ月近くかけてやっと廻ってきました。私にとっては、『ダ・ヴィンチ・コード』に続いての2作目なのですが、『ダ・ヴィンチ・コード』と同様に「これぞエンターテイメント小説!」という興奮の読書体験でした。ストーリー展開の早さ・意外さ・緊迫感は読者の目をページから離させません。

 現在と過去(歴史)を、骨太の社会的テーマで結びつけるのもこのシリーズの面白さです。今回の題材は、地球の人口爆発を軸に保健政策、パンデミックに及びます。ダンテの『神曲』の「地獄篇」を低音通奏として使い、1500年もの時間軸を行き来しつつ、題材について考えさせるというちょっと知的な興奮はなかなか類書では味わえないです。

 更に、空間スケールの大きさも魅力。今回はフィレンチェ、ベネチィア、イスタンブールと欧州の歴史的な街・史跡を登場人物たちが縦横に駆け巡ります。描写も丁寧で、未踏の読者は行きたくなることと間違いないでしょうし、訪問したことのある人は以前の旅に思いを馳せつつ、次回の訪問を計画したくなります。

 秋の夜長を楽しむのにはびったりの作品でした。
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