国立新美術館で開催中の〈ウィーン・モダン〉展に行ってきた。「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」というサブタイトルだったので、てっきりウィーンの世紀末美術の展覧会と思っていたら、私の早とちりで、たしかに「世紀末『への』道」なので世紀末美術だけではない。18世紀後半から20世紀初頭までのウィーンの都市史・芸術史の展示だった。私は行ったことないが、当地のウィーン・ミュージアムが改修中ということで、同館の所蔵品をまとめて持って来てくれているらしい。
とにかく、広範囲の展示品に圧倒される。下に転載した本展覧会の構成を見ていただきたいが、まさにウィーン近代芸術史鷲掴みという感じだ。絵画だけでなく、椅子・食器などの生活用品、服飾なども含んだ総合展示である。一つ一つ丁寧に見ているときっとクリムトに辿り着く前にガス欠になる人も出てくるだろう。
私自身はクリムトら分離派などの世紀末美術をお目当てにしていたので、前半は軽く流そうとしたが、それでも見応え十分で面白いものがたくさんあり、どうしても足が止まる。シューベルトの眼鏡なんかもあり(精巧でかなり凝った感じの眼鏡だった)、興味を引いた。ウィーンが城壁に囲まれた城壁都市で、その城壁跡がリンク通りなんてことも初めて知った。
お目当ての分離派や世紀末美術の展示も楽しめた。個人的には、分離派の様々なPRポスターがお好みで、ポスターを集めたクリアホルダーも購入。数は多くはないが、分離派画家の諸作品もその類似や相違があり面白い。エゴン・シーレはこれまで意識して鑑賞したことが無かったので、その個性的な作品群に強く魅かれた。
今回嬉しかったのは、7月・8月の金・土は国立新美術館は21時まで開館してくれていることだ。丁度、19時ごろに入館したのだけど、通常の20時閉館ではとても見切れない質・量の特別展だっただけに、ホント助かった。夏だけと言わず、通期で21時閉館をお願いしたいなあ。
《構成》
1 啓蒙主義時代のウィーン ̶近代社会への序章
1-1 啓蒙主義時代のウィーン
1-2 フリーメイソンの影響
1-3 皇帝ヨーゼフ2世の改革
2 ビーダーマイアー時代の ウィーン
2-1 ビーダーマイアー時代のウィーン
2-2 シューベルトの時代の都市生活
2-3 ビーダーマイアー時代の絵画
2-4 フェルディナント・ゲオルク・ ヴァルトミュラー̶自然を描く
2-5 ルドルフ・フォン・アルト ̶ウィーンの都市景観画家
3 リンク通りとウィーン ̶新たな芸術パトロンの登場
3-1 リンク通りとウィーン
3-2 「画家のプリンス」ハンス・マカル
3-3 ウィーン万国博覧会(1873年)
3-4 「ワルツの王」ヨハン・シュトラウス
4 1900年̶世紀末のウィーン ̶近 モダン 代都市ウィーンの誕生
4-1 1900 年̶世紀末のウィーン
4-2 オットー・ヴァーグナー ̶近代建築の先駆者
4-3-1 グスタフ・クリムトの初期作品 ̶寓意画
4-3-2 ウィーン分離派の創設
4-3-3 素描家グスタフ・クリムト
4-3-4 ウィーン分離派の画家たち
4-3-5 ウィーン分離派のグラフィック
4-4 エミーリエ・フレーゲとグスタフ・ クリムト
4-5-1 ウィーン工房の応用芸術
4-5-2 ウィーン工房のグラフィック
4-6-1 エゴン・シーレ ̶ユーゲントシュティールの先へ
4-6-2 表現主義̶新世代のスタイル
4-6-3 芸術批評と革新