先週、調布国際音楽祭を訪れた際に、同市にある桐朋学園のオーケストラが定期演奏会をやっているということを知った。一度聞いてみたいものだと思い、2週続けて調布市のグリーンホールへ出陣。
音楽専門課程を持つ学校のオケの演奏会とは言え、そんなにお客さんが来るものではないだろうと高を括っていたらとんでもない。開演40分前に着いたら、当日券売り場に人が列をなして並んでいる。残席も1階席は端っこの壁際の席しか残っておらず、2階席も殆どが一杯だった。幸い、おひとり様だったので、残った席では一番良さそうな1階席の前から4列目の左サイド端を購入(1000円也)して、会場入りした。
ホールに入ると、こちらにもサプライズ。大学オケの演奏会だから、友達とか家族とか奏者や学校関係者のお客さんが殆どなのではと勝手に思っていたのだが、いやいや見た風、地元の市民の方が殆どのようである。そして、それもかなり高齢者の方が多い。N響定期の平均年齢の高さは良く揶揄されるネタだが、(目視でしかすぎないが)平均年齢はN響定期をはるかに上回ると思われた。察するに、生演奏に行きたいが都心に出るのはちょっとしんどいが、地元なら気軽に行けるということなのだろうか。前週のBCJとは客層は全く違うが、BCJよりも入っているのではと思わせる盛況ぶりだった。
さて、前置きが長すぎたが、肝心の演奏の方もとっても満足するものだった。特に、後半のベートーヴェンの交響曲7番は熱演で、個々の技巧もさることながら、全体としてのアンサンブルのバランスも良く、熱量も高いもので、さすがプロの音楽家を志す人達であると感嘆させられた。私の席からは、管陣が全く見えないのが残念だったが、オーボエ、フルート、ホルンらがメロディをしっかり歌い、弦パートも安定した合奏で、7番の勢いやリズム感豊かに聞かせてくれた。あえて言えば、これは指揮の中田さん(この方、筑波大の医学課程から音楽の道に転向したというユニークな経歴である)の解釈だと思うのだが、第2楽章がすーっと流れてしまった感じがしたので、もう少ししっとり聞かせてほしかったなあとは思ったぐらい。
前半はスメタナの<わが祖国より>から2曲と、私は全く初めて聞くショーソンのヴァイオリン協奏曲とも言える<詩曲>。スメタナは1曲目の<高い城>で金管陣が不安定でちょっと不安になったが、<モルダウ>からは調子に乗ってきた感じ。モルダウはボヘミア風の土臭い演奏というよりは、重心が高めのスマートな演奏だった。
ショーソンの<詩曲>はヴァイオリン・ソロを吉江美桜さんという同大の卒業生でもあり現在も同大のディプロマ・コースに在籍中の方が弾かれた。プログラム・ノートによると、この曲はツルゲーネフの「勝ち誇る愛の歌」の影響を受け、男女間の三角関係の物語の音楽化を目指したが、最終的には純管弦楽曲として作曲されたらしい。が、その当初の思いの残像が残るロマンチックかつドラマティックな音楽で、吉江さんはそれを丁寧かつしっとりと聞かせてくれた。今後の活躍が楽しみだ。
というわけで、とっても満足だったのだが、一つだけ気になったところがあった。舞台に団員の皆さんが入って来た時は「おー、みんな若いなあ~(いいなあ~)」と思ったのだが、どうも演奏中の表情が全体的に無表情で、何か若者らしい溌溂さや、(大谷君みたいな)ぴちぴち感や躍動感を感じない。う~ん、この若者たち、楽しんで演奏しているのだろうかと心配になってしまった。(私の席からは弦の人たちの一部しか見えなかったので、管の人たちはわかりません。あくまでも、私の視界の世界です。あしからず。)別に、「別に高校野球じゃないんだから勝手なイメージ押し付けてほしくないし、表情が無表情なのと表現される音楽は関係ないでしょ」と言われればそうなのかもしれないが、ちょっとそこは残念なとこだった。勝手な感想を書いているので関係の方が読んで気分を害したらとっても申し訳ないのだけど、一素人のたわごとして流してもらえれば良いと思う。(これも出羽守風で嫌われるの覚悟だが、ロンドンのプロムスで National Youth Orchestra of Great Britainが出演した際に観に行った演奏会は、緊張感の中にも音楽を演じる喜びに満ち溢れていて、見ているだけでこっちもHappyな感じだったというのもあった)
まあ小姑の小言みたいな話はやめておいて、全体としては、この高いレベルの演奏が1000円で聴けるなんて、先週の音楽祭と言い、調布市民は恵まれていることか。次回は12月にあるそうなので、こちらも時間が取れるようなら是非、Come backしたい。
桐朋学園オーケストラ グリーンホール定期 vol.11
公演日 2019年7月6日(土) 開場13:30、開演14:00
会場 グリーンホール 大ホール
出演者 指揮:中田 延亮
ヴァイオリン:吉江 美桜
管弦楽:桐朋学園オーケストラ
♪スメタナ:「わが祖国」より
1.高い城 2.モルダウ
♪ショーソン:詩曲
※ヴァイオリン・ソロ:吉江 美桜
♪ベートーヴェン:交響曲第7番