その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

力籠る熱演!:オペラ夏の祭典 2019-20 オペラ「トゥーランドット」(指揮 大野和士) @新国立劇場オペラパレス

2019-07-22 07:30:00 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

 

久しぶりの「トゥーランドット」。物語としてはあまり共感できる話ではないが、美しいアリアと迫力の合唱が大好きなオペラである。今回の公演は、大野和士さんが音楽監督を務めるバルセロナ響を率いて、東京文化会館と新国立劇場で計7公演に加え、琵琶湖と札幌を巡るという。「オペラ夏の祭典」という名に相応しい大型企画。

私が見たのは20日の新国立劇場の公演だが、力の籠ったレベルの高いもので、舞台に釘付けの3時間だった。出演者の皆さんもインターナショナルなので、こうした表現もおかしいが、ワールドクラスの公演で圧倒的だった。

歌手陣では、リューを歌った中村恵理さんの熱唱とひたむきな演技が光っていた。一途の愛に生きる姿には涙なしでは聴いていられない、観てられない。ロイヤル・オペラでの若手研修プログラムの時から応援させてもらっているが、小柄な方だが舞台では存在感抜群。今回もMVP間違いなしの好演だった。カラフ役のテオドール・イリンカイさんは、やや硬質系のテノールが美しい。ただ、カラフ役としては意外と地味だった印象がある。一方で、題名役のイリンカイさんは、堂々たる歌唱で難役をこなしていた。毎回個人的に注目のピン・パン・ポンの3人衆は、衣装が似ていて最深部の私の席からは区別がつきにくかったのが残念。

中村さんと並んで、印象的だったのは合唱団。多数の合唱団のコーラスは全く乱れることなく、トゥーランドットの世界観を構成し支えた。美しく聞き惚れ、合唱だけでも効く価値があると思った。大野さん率いるバルセロナ交響楽団は初体験だったが、スケール大きく鳴らし、実力歌手陣との華のある共演だった。

舞台は、地域性、時間軸が曖昧で、仮想空間とも近未来世界とも言える世界。未来の地下の核シェルターとも見えるような、暗い色調をベースにして、舞台の両端に壁がそびえ、そこを狭く急な階段が掛けられる。(私は読んでないのでツイッター上の情報だが)プログラムノートには、映画「ブレードランナー」の影響を受けていることが書いてあるらしいが、私にはむしろテリー・ギリアム監督の「未来世紀ブラジル」の世界観を思い出させた。好き嫌いは分かれるだろう。本作独特の中華世界色は全くないが、かといって作品の雰囲気を壊しているかというとそうでもなく、異世界を楽しめた。驚きの結末についてはノーコメント。

満員の劇場からは大きな拍手が寄せられ、特に中村さんへの拍手、歓声はひときわ。この日は会場は家族連れの方もおり、普段より華やかな印象で、雰囲気も含めてオペラ観劇の楽しさを満喫した半日だった。

 

2019720日 新国立劇場オペラパレス
2018/2019シーズン
オペラ夏の祭典 2019-20 Japan↔Tokyo↔World
オペラ「トゥーランドット」/ジャコモ・プッチーニ ※フランコ・アルファーノ補筆
Turandot / Giacomo PUCCINI
3幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉 

スタッフ
指揮:大野和士
演出:アレックス・オリエ
美術:アルフォンス・フローレス
衣裳:リュック・カステーイス
照明:ウルス・シェーネバウム
演出補:スサナ・ゴメス
舞台監督:菅原多敢弘 

キャスト
トゥーランドット:イレーネ・テオリン
カラフ:テオドール・イリンカイ
リュー:中村恵理
ティムール:リッカルド・ザネッラート
アルトゥム皇帝:持木
ピン:桝 貴志
パン:与儀
ポン:村上敏明
官吏:豊嶋祐壹 

合唱指揮:三澤洋史
合唱:新国立劇場合唱団、藤原歌劇団合唱部、びわ湖ホール声楽アンサンブル
児童合唱:TOKYO FM少年合唱団
管弦楽:バルセロナ交響楽団
制作:新国劇場/東京化会館

Opera
SUMMER FESTIVAL OPERA 2019-20 Japan ↔ Tokyo ↔ World "Turandot"
2018/2019 SEASON
New Production
Music by Giacomo PUCCINI
Opera in 3 Acts
Sung in Italian with ENGLISH and Japanese surtitles
OPERA PALACE
18 Jul. - 22 Jul., 2019 ( 4 Performances )

 

CREATIVE TEAM
Conductor: ONO Kazushi
Production: Àlex OLLÉ
Set Design: Alfons FLORES
Costume Design: Lluc CASTELLS
Lighting Design: Urs SCHÖNEBAUM
Associate Director: Susana GÓMEZ 

CAST

Turandot: Iréne THEORIN
Calaf: Teodor ILINCĂI
Liù: NAKAMURA Eri
Timur: Riccardo ZANELLATO
L'imperatore Altoum: MOCHIKI Hiroshi
Ping: MASU Takashi
Pang: YOGI Takumi
Pong: MURAKAMI Toshiaki
Un mandarino: TOYOSHIMA Yuichi 

Chorus:
New National Theatre Chorus
Fujiwara Opera Chorus Group
BIWAKO HALL Vocal Ensemble
Orchestra: Barcelona Symphony Orchestra
Produced by: New National Theatre, Tokyo / Tokyo Bunka Kaikan

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