日本人作曲家と二人のポーランド人の作曲家の音楽で組んだユニークなプログラム。尾高尚忠、パヌフニク、ルトスワフスキの3名は同世代でかつ「それぞれに学友として切磋琢磨した間柄」(「フィルハーモニー」)とのことです。演奏機会は多くないだろうし、私自身も定期会員でなければ進んで聴きに来ることはない気がしますので、会員であったから経験できたプログラムでした。そして、それぞれに心動かされる3曲で、とっても満足感の高い演奏会でした。
前半の尾高尚忠(指揮の尾高忠明氏のお父さん)のチェロ協奏曲は楽曲と演奏の双方がすばらしい。音楽は映画音楽のようなドラマティックさに加えて、日本的な香りを節々に感じます。そして、宮田さんのチェロの音色が深く濁りなく美しいこと。曳き立てのコーヒー豆を上手く淹れた時の一杯をしみじみと味わうような落ち着きを感じます。そして、時としてとっても情熱的。うっとりでした。
後半の1曲目のパヌフニクの「カティンの墓碑銘」は「第2次世界大戦中に「カティンの森」で虐殺された1万5000人のポーランド人の戦争捕虜たちに捧げられた作品」(フィルハーモニー)。(なぜか「フィルハーモニー」には誰に虐殺されたのかの記載が抜け落ちていますが、(Wikiではありますが)ソ連政府自身がソ連によるものと1990年に認め、ロシア政府が1992年には証拠文書を公開しています)8分程度の小品ですが、冒頭のヴァイオリンのソロから張り詰めた厳粛な音楽で、現在のウクライナ情勢も重ね合わさり、胸を打たれました。
最後のルストワフスキ「管弦楽のための協奏曲」は、以前、パーヴォ/N響で聴いていますが、記憶にはあまり残っていませんでした。ポーランドの民族音楽を取り込んでいるというこの音楽は、各楽器の見せ場もふんだんにあり味わい深いです。尾高さんの捌きでN響の各パートがしっかり嚙み合って充実の演奏でした。
プログラム的に空席もそれなりにあった観客席でしたが拍手は盛大。カーテンコールの途中で、尾高さんからポーランドの虐げられた苦難の歴史と現在の戦争終結を祈る平和祈念メッセージもありました。地味なプログラムではありましたが、こうした意図を感じる企画型プログラムは良いですね。内容濃く、充実感一杯でNHKホールを後にしました。
第1977回 定期公演 Aプログラム
2023年2月5日 (日) 開演 2:00pm
NHKホール
尾高尚忠/チェロ協奏曲 イ短調 作品20
パヌフニク/カティンの墓碑銘
ルトスワフスキ/管弦楽のための協奏曲
指揮 : 尾高忠明
チェロ : 宮田 大
No. 1977 Subscription (Program A)
Sunday, February 5, 2023 2:00pm [ 1:00pm ]
NHK Hall
Hisatada Otaka / Concerto A Minor Op. 20
Panufnik / Katyń Epitaph
Lutosławski / Concerto for Orchestra
Artists
Conductor: Tadaaki Otaka
Cello: Dai Miyata