初めて観るオペラです。原作の「ウインザーの陽気な女房たち」の舞台は見たことありますが、あのコメディにヴェルディがどんな音楽を付けたのか、ヴェルディ最後にして2作目というこの喜劇の観劇を心待ちにしていました。
一言で言うと、歌唱、演奏、演出の3拍子が揃って、非の打ちどころがない、期待を大きく上回る高水準なパフォーマンスで、幸せ感いっぱいでした。
歌手陣は、これをはまり役と言わずに何と呼ぶかと思うほど、題名役のアライモが演技・歌唱ともに素晴らしかった。声はずっしりと太く落ち着いた美声で、良く通ります。タンホイザーのグールドも良かったけど、甲乙つけがたい素晴らしさ。演技も好色、酒好き、見栄っ張り、自信家のキャラを統合させてお見事でした。
そして、脇役陣も素晴らしい。フォード夫人のマンテーニャ、クイックリー夫人のピッツォラート、ナンネッタの三宅、フェントンの村上、何れも聞き惚れる美しい歌声でした。歌だけでなく、演技も堂に入ったもので、舞台全体が実に活力に満ち溢れ、オペラへの投入感がどんどんと高まっていく舞台でした。
パフォーマンスとは全然、別の話なのですが、個人的に残念だったのはページ夫人役の脇園さんの出番が少なかったこと。脇園さんファンとしては、「ページ夫人にもっと歌を!」と何度心の中で叫んだことか。
ピットに入ったのは、タンホイザーと同じ東響ですが、音楽の勢い、切れが素晴らしい。音楽と舞台がしっかりと噛み合っていて、活力あるシナジーが生まれていました。正直、タンホイザーよりもずっと良かったです。私は初めてでしたが、フィラデルフィア・オペラの音楽監督を務めるロヴァーリスの持って行き方が上手いのでしょうね。
ミラーの演出は16世紀オランダ風に舞台を作り上げて、光の効果を上手に活用し、品があって美しい舞台でした。移動式のセットで場を作ります。作品や音楽の雰囲気を相乗的に高め、かつ舞台が過剰に主張しない。私好みの演出です。
原作の良さもあるのでしょうね。シェイクスピアの喜劇は人のダメさや良さの描き方が素晴らしいですね。(原作にはないですが、)ラストシーンでのファルスタッフが歌う「人生はみな冗談」。最近、どうも力が入りすぎていると思う私自身の肩を揉みほぐしてくれるようでした。
是非、また再演をお願いしたいです。
2022/2023シーズン
ジュゼッペ・ヴェルディ
ファルスタッフ Falstaff / Giuseppe Verdi
全3幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉
2023年2月12日(日)
予定上演時間:
約2時間35分(第1・2幕80分 休憩25分 第3幕50分)
スタッフ
【指 揮】コッラード・ロヴァーリス
【演 出】ジョナサン・ミラー
【美術・衣裳】イザベラ・バイウォーター
【照 明】ペーター・ペッチニック
【再演演出】三浦安浩
【舞台監督】髙橋尚史
キャスト
【ファルスタッフ】ニコラ・アライモ
【フォード】ホルヘ・エスピーノ
【フェントン】村上公太
【医師カイウス】青地英幸
【バルドルフォ】糸賀修平
【ピストーラ】久保田真澄
【フォード夫人アリーチェ】ロベルタ・マンテーニャ
【ナンネッタ】三宅理恵
【クイックリー夫人】マリアンナ・ピッツォラート
【ページ夫人メグ】脇園 彩
【合唱指揮】三澤洋史
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京交響楽団
2022/2023 SEASON
Music by Giuseppe VERDI
Opera in 3 Acts
Sung in Italian with English and Japanese surtitles
OPERA PALACE
10 Feb - 18 Feb, 2023 ( 4 Performances )
CREATIVE TEAM
Conductor: Corrado ROVARIS
Production: Jonathan MILLER
Set and Costume Design: Isabella BYWATER
Lighting Design: Peter PETSCHNIG
CAST
Sir John Falstaff: Nicola ALAIMO
Ford: Jorge ESPINO
Fenton: MURAKAMI Kota
Dr. Cajus: AOCHI Hideyuki
Bardolfo: ITOGA Shuhei
Pistola: KUBOTA Masumi
Mrs. Alice Ford: Roberta MANTEGNA
Nannetta: MIYAKE Rie
Mrs. Quickly: Marianna PIZZOLATO
Mrs. Meg Page: WAKIZONO Aya
Chorus: New National Theatre Chorus
Orchestra: Tokyo Symphony Orchestra