今月、彩の国シェイクスピア・シリーズ『ジョン王』を観劇予定なので、原作を読んでみました。シェイクスピアの戯曲はそれなりに読んでるつもりですが、本作は初めてです。ジョン王については、世界史の知識としても、失政多いイングランド王で、それがマグナカルタの契機になったというぐらいしか知りません。更に、Wikiによると「現在ではシェイクスピア作品の中でももっとも有名でない作品となり、上演されることも稀である。」とのこと。一体どんな話なのか興味津々でありました。
フランス王フィリップとイギリス王ジョン(当時はフランスの一部も領有)の二国間戦争を背景にした本作は、歴史劇として十分面白いと思いました。タイトルこそ「ジョン王」ですが、登場人物夫々が個性的で、主人公としての科白量が突出しているわけではありません。登場人物夫々にシェイクスピアならではの、修辞たっぷり、聞かせどころ満載の科白が与えられています。役者がこれらをどう語り、どう演じるのか、芝居が楽しみです。
個人的には、当時のイングランドにおける王と貴族の力関係、フランスとイギリスの国際関係、ローマ教会と各国の王との関係性も理解できたところが嬉しかった。骨だけの歴史的知識に肉が付いた感じです。
松岡さんの訳注も非常に知的興味をそそられます。訳語ではわからない場面場面でのYou、Thouの使い分け等を解説し、状況での登場人物の社会的・心理的立場を明らかにしてくれます。これ以外にもいろんな英語上のニュアンスや史実の対比、版による違い等も触れてあり、通して講義を受けたいぐらいです。
演劇における戯曲(台本)は音楽の楽譜のようなものなのでしょう。この台本がどういう舞台になるのか楽しみです。