京都の東福寺は名前こそ知っているものの訪問歴はない。久しく、仏さま見物にご無沙汰していることもあり、東福寺にはどんな仏さまがいらっしゃるか、見仏気分で東京国立博物館へ出かけた。するとすると、それがそれが、絵画・書・物・彫刻など禅宗美術の文物が、想像を遥かに超える質と量で展示してあった。国宝や重要文化財のオンパレードでもある。殆どが東福寺の所蔵であり、超がつくほど驚きだった。伽藍の写真等も掲示されていたが、錚々たる禅宗のお寺であることを初めて知るに及んだ。奈良の東大寺と興福寺からそれぞれ一文字を取ってつけられたというだけのことはある。
個人的に特に印象に残ったものを3つほど上げると。
まずは、東福寺を拠点に活躍した絵仏師の吉山明兆(きっさんみんちょう、1352~1431)の作品群。名前は「日本史教科書の脚注にあったかな?」レベルの認識だったが、今回の目玉である五百羅漢図の作品群が素晴らしい。ずいぶん色合いが奇麗だなと感じたら、14年かけて修復作業が行われたとこのこと。館内には修復プロジェクトを紹介する3分程度のビデオも流されている。一つ一つの絵に物語があるので、それを想像するのも楽しい。いくつかには漫画解説(絵を使って台詞を入れた4コマ程度の漫画にしたもの)があって、楽しい見せ方と感心した。
期間限定展示の白衣観音図も素晴らしかった。縦が326.1cmある大きな絵の中央に座して黙想する観音様が描かれている。描かれた観音様自身は大きく描かれているわけではないようにも見えるが、絵の前に立つと、実に大きく見える。その静で凛とした佇まいには、聖なものを感じる。
続いて、東福寺開祖の円爾が博多の承天寺を開堂した際に宋の留学時の師匠であった無準師範が贈った一群の額字・牌字(はいじ)の作品群。字が持つ気迫、美しさが迫ってくる見事な書である。草書系の字は正直私には良いも悪いも分からないのだが、こうした楷書系の字はストレートで私でも感じるところ多いのが嬉しい。現在のお堂の額とかで残っているようなので、是非、東福寺を訪れた際には見ておこうと思った。
そして、お目当ての仏像である。さすがにご本尊様は引っ越しされてなかったが、脇侍の迦葉(かしょう)・阿難立像(あなんりゅうぞう)はユニークだし、さらに夫々の隣に立つ二天王立像(重要文化財、13世紀)が凄い。3mは超えていると思える。その力強さ、激しさには思わず後ずさりしてしまうほどだ。撮影可能エリアでは、火災で焼失した旧本尊の手である巨大な「仏手」が展示されている。手だけでこんなに大きいのだから、どんだけ本尊は大きかったのだろうか。
<写真撮影可能エリアで 寺院内を再現 今の時期は新緑、秋は紅葉が素晴らしいらしい>
<旧本尊の釈迦如来坐像(光背化仏) 鎌倉~南北朝時代 14世紀>
<仏手 東福寺旧本尊 1個 鎌倉~南北朝時代 14世紀 東福寺>
普段は非公開であろうものもあるだろうから、東福寺を訪れても、これらの品をすべて見ることは叶わないと思われる。だが、この展覧会を行って、東福寺に行きたいと思わない人は居ないだろう。京都には5月までにもう一つ行かなくてはいけないイベントがあるのだが、もう一つ行くべきところが追加されてしまった。
2100円の入場料は高いが、この内容なら決して高すぎるとは思わない。5月7日までなので、見逃しはもったいないです。できれば私もゴールデンウイーク中に再訪するつもり。
2023年4月12日訪問
(構成)
第1章 東福寺の創建と円爾
第2章 聖一派の形成と展開
第3章 伝説の絵仏師・明兆
第4章 禅宗文化と海外交流
第5章 巨大伽藍と仏教彫刻