その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

聖金曜日に受難曲を聴く:指揮 鈴木雅明/バッハ・コレギウム・ジャパン @東京オペラシティコンサートホール

2023-04-09 07:30:55 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

聖金曜日にBCJの受難曲を聴くのは、コロナ禍前の2018年以来です。字幕が無い時に備えて、その時のプログラムを持参しました。

いつもながらではありますが、いつものクラシック音楽の演奏会に行くのとは一味も二味も違う音楽体験の場でした。

クリスチャンでない私が、神聖で厳粛な気持ちにさせられます。音楽を聴きながら、体が清められていくのです。体の様々な部位に沈殿した老廃物が洗浄されます。

そして、まさに西洋文明の一つの根っことも言えるキリストの受難の物語はなんと厳しいものなのか。多神教で宗教的に大らかな私のような日本人には想像はできても、実感覚にはとっても遠いこの徹底的に追い詰められる切迫感。息が詰まるようです。

鈴木パパ指揮によるBCJの演奏・合唱は、これもいつもながらではありますが、素晴らしいの一言。とりわけ合唱の美しさには言葉が見つかりません。パパ鈴木の熱い指揮に応えた熱演でした。

独唱陣も充実。エバンジェリストのトマス・ホッブスさんが安定したテノールで安心して音楽の展開に身を委ねられます。印象的だったのはアルトの久保法之さん。繊細で美しい男声アルトがホールに響きました。イエスのマーティン・ヘスラー、ルビー・ヒューズさん・松井亜希さんの両ソプラノも十八番という感じで文句無しです。

バッハの宗教音楽にはオペラシティコンサートホールは雰囲気と言い、規模と言いぴったりですね。まるで教会にいるような感覚になります。

毎年、この時期に受難曲を、それもこれだけのワールドクラスの演奏が聴ける日本って、なんか不思議な国ですね。身の幸運すら感じます。個人的には、毎年聴くにはちょっと重すぎる受難曲なのですが、これからもBCJが公演を続けてくれる限りは、数年おきには聴いていきたいと思います。

 

受難節コンサート2023《マタイ受難曲》(聖金曜日)
第154回定期演奏会

2023年 4.7(聖金曜日)18:30~
東京オペラシティ コンサートホール

J.S. バッハ:《マタイ受難曲》BWV 244

指揮:鈴木雅明

エヴァンゲリスト:トマス・ホッブス
ソプラノ:ルビー・ヒューズ、松井亜希
アルト:久保法之、青木洋也
テノール:谷口 洋介
バス:マーティン・ヘスラー、加耒 徹

合唱:バッハ・コレギウム・ジャパン、東京少年少女合唱隊
管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン

 

St. Matthew Passion

154th Subscription Concert

2023 . 4.7(Good Friday)18:30-

Tokyo Opera City Concert Hall: Takemitsu Memorial

  1. S. Bach: St. Matthew Passion, BWV 244

Conductor: Masaaki Suzuki
Evangelist (Tenor): Thomas Hobbs
Jesus (Bass): Martin Häßler
Soprano: Ruby Hughes, Aki Matsui
Alto: Noriyuki Kubo, Hiroya Aoki
Tenor: Yousuke Taniguchi
Bass: Toru Kaku
Soprano in ripieno: The Little Singers of Tokyo

Chorus & Orchestra: Bach Collegium Japan

 

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