その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

アンスネス、青天を衝く!: 尾高忠明/N響 ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番〈皇帝〉ほか

2023-10-29 07:23:04 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

ブロム翁不在の10月定期Bは尾高さんがピンチヒッター。

前半のアンスネスさんのピアノ独奏による「皇帝」が圧倒的でした。

ピアノの音が実にクリア。堂々として揺るぎが無い。かと言っていたずらに勇壮に見せかけているわけでもない。一つ一つの音がダイレクトに胸に響いてきました。「青天を衝け」と語っている気がしました。舞台後方のP席からのピアノ協奏曲の鑑賞は苦手意識があるのですが、この日は全くそうした気持ちになかった。

オケも充実してました。第1楽章は思いのほか早めのテンポでキビキビと進むのが心地よかった。P席からはピアノとのバランスも良く、私が勝手に思い描く〈皇帝〉の理想の演奏に立ち会えた気がしました。

アンスネスさんのアンコールはベートーヴェン、ピアノソナタ「悲愴」は第2楽章。柔らかで優しい美音です。メインディッシュ「皇帝」後の、極上のアイスクリームを頂きました。

後半はブラームスの交響曲第3番。初演の指揮者ハンス・リヒターやブロム翁はこの曲は「ブラームスの〈英雄〉」と言っていることがプログラムに記載されていました。私自身は前半の〈皇帝〉の余韻が残る中で、なかなか気分の切り替えができなかったのですが、こちらも充実の演奏でした。

全楽章を通じての弦の響きはもちろんのこと、第2、3楽章の管楽器陣のソロ、合奏が特に美しく感じました。

指揮法も何もわからないで言ってますが、尾高さんの指揮はとってもスマートですね。オーケストラに向かって、優しく包み込むような雰囲気で、リードします。なにか魔法でもかかっているように、そこから生まれてくる音楽は、素で純で柔らかいものに感じられます。

大きな拍手に包まれて演奏会は終了しました。私自身、2つの曲に一杯の元気を頂きました。高関さんに続いて、ブロム翁の穴を見事に努めていただいた尾高さん。とっても感謝です。


 

第1994回 定期公演 Bプログラム
2023年10月26日 (木) 開演 7:00pm

サントリーホール

曲目
ベートーヴェン/ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 作品73 「皇帝」
ブラームス/交響曲 第3番 ヘ長調 作品90

指揮 : 尾高忠明
ピアノ : レイフ・オヴェ・アンスネス

Subscription Concerts 2023-2024Program B
No. 1994 Subscription (Program B)
Thursday, October 26, 2023 7:00pm [ Doors Open 6:20pm ]

Suntory Hall

Beethoven / Piano Concerto No. 5 E-flat Major Op. 73, Emperor
Brahms / Symphony No. 3 F Major Op. 90

Conductor: Tadaaki Otaka
Piano: Leif Ove Andsnes

コメント
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